1日の日本市場では円相場が4カ月ぶり安値水準となる1ドル=150円台後半で推移した。日本銀行は早期利上げに慎重との見方から円安圧力が続いた。債券は中期債が上昇(利回りは低下)した。

株式は、円安などが支えとなり東証株価指数(TOPIX)が3日続伸。一方、前日に業績を下方修正した東京エレクトロンの株価が急落し、日経平均株価は反落した。

前日の植田和男日銀総裁の会見で利上げに積極的な姿勢が示されず、利下げに慎重な米国のパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長の姿勢も相まって、日米金利差は当面縮まらないとの見方が広がった。市場は次の手がかりとして、日本時間夜に発表される7月の米雇用統計に注目している。

みずほ証券の大森翔央輝チーフ・デスク・ストラテジストは、植田総裁が今後の利上げに対して中立的な姿勢を示し、過度な利上げ期待が後退した中で、米雇用統計が市場予想より強い結果となれば、円は152円台を試す可能性もあると指摘した。

加藤勝信財務相は1日の閣議後会見で、足元で進む円安に関して「投機的な動向も含めて、為替市場の動向を憂慮している」と述べた。為替の動きそのものについてはコメントを控えた一方、「為替相場はファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが重要」との認識を繰り返した。

為替

東京外国為替市場の円相場は、植田総裁の会見をきっかけとした円売りの流れが続き、一時151円に接近した。その後は週末に米雇用統計を控えて、持ち高調整のドル売り・円買いの動きもあり、もみ合った。

ブルームバーグのエコノミスト調査によると、7月の米雇用統計では雇用者数の伸びが鈍化し、失業率は小幅に上昇すると予想されている。

SBIリクイディティ・マーケットの上田真理人金融市場調査部長は、雇用統計がそこそこ良くて、今月発表される米物価指標が鈍化しなければ、ドル買いにバイアスがかかると予想する。その上で、日銀が利上げをしない場合や年内の米利下げが見えなくなれば、155円台まで円安が進む可能性があるとの見方を示した。

株式

日本株は、為替の円安やトランプ関税への懸念一服で自動車株や商社株が上昇。一方、東京エレクトロンによる営業利益予想引き下げで業績懸念が高まり、半導体関連が売られた。

東エレク株は一時制限値幅いっぱいの18%(5000円)安でストップ安となった。T&Dアセットマネジメントの酒井祐輔シニア・トレーダーは、「東エレクのネガティブな影響は日経平均にとって大きい」とし、今回の決算を受けて半導体株全体の上昇を期待するのはもはや難しいと述べた。

トランプ米大統領は7月31日、各国への新たな関税率を設定した。酒井氏は、日本に対する15%の税率が確認されたことで、関税についてはひとまず安心できると話す。その上で、今後は関税が各企業の業績にどう影響するかが重要で、グローバル貿易に関する不確実性は残っていると指摘した。

個別銘柄では、トランプ氏が米メディケイド(低所得者向け公的医療保険)対象薬品の価格引き下げを製薬会社に求めたことを受けて、住友ファーマが一時7%超下落。前日に営業利益計画の上方修正を発表した富士電機は一時16%高と急反発した。

債券  

債券相場は中期債が上昇。日銀の早期利上げに慎重な姿勢を受けた買いが優勢だった。超長期債は、利上げによる短めの債券との利回り格差縮小を見込んだフラット(平たん)化取引の反動で売られた。

SMBC日興証券の奥村任シニア金利ストラテジストは、植田総裁の会見を受けて債券が買われているのを見ると、日米関税交渉の合意を受けて日銀が利上げに対する積極姿勢を強めて「タカ派化すると見込んでいた向きが多かったのだろう」と語った。

新発国債利回り(午後3時時点)

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