(ブルームバーグ):日米の金融当局者が政策変更に慎重な姿勢を示したことで、市場では円売りが一段と進むとの見方が広がっている。足元の円安を受けて加藤勝信財務相が「為替市場の動向を憂慮している」と発言し、当局による為替介入のリスクも意識され始めた。
日本銀行の植田和男総裁の記者会見がハト派的と市場は受け止め、早期利上げへの期待が後退した。1日の外国為替市場では円が1ドル=150円台後半まで下落し、3月以来の安値圏で推移している。
SBIリクイディティ・マーケットの上田真理人金融市場調査部長は、日銀が利上げをしない場合や年内の米利下げが見えなくなれば155円台まで円安が進む可能性があると指摘。日銀が利上げをしなければ円安を止める手段は「介入しかない」と語る。
加藤財務相は、為替の動き自体へのコメントを控えたものの、「為替相場はファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが重要」と1日の閣議後会見で述べた。

国内の政治情勢や米関税への懸念を背景に円は7月に対ドルで約4.5%下落した。夏季休暇を前にしたポジション調整などで円高方向に振れやすい季節性に反し、7月としては6年ぶりの下落となった。日銀の金融政策決定会合の前には米国の利下げ期待が後退し、円にさらなる下押し圧力がかかった。
ふくおかフィナンシャルグループの佐々木融チーフ・ストラテジストは、植田総裁のハト派姿勢がドル・円の155円突破の可能性を高めたと話す。米連邦準備制度理事会(FRB)は年内に利下げをできないとみており、利下げ期待の後退でドルが買われるとの見方を示した。
米国時間1日に発表される7月の雇用統計を受けて円安が加速する可能性もある。非農業部門雇用者数の市場予想は10万4000人増で、前月の14万7000人増から伸びが鈍化する見込み。
みずほ証券の大森翔央輝チーフ・デスク・ストラテジストは、雇用統計が市場予想よりも強い結果となれば、ドル・円は152円台を試す可能性があると述べた。
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