中国で7月下旬開催された人工知能(AI)会議ではヒト型ロボットがボクシングでの対決を披露したが、その傍らではAI時代のルール策定を巡る米中間の争いが繰り広げられた。

上海での「世界人工知能大会(WAIC)」で、中国はAIを安全かつ包摂的に活用するため国際組織の創設を提唱。李強首相は26日のスピーチで、AI「独占」の危険性に言及し、主に途上国の当局者に対しAIのガバナンス(統治)で協力を呼びかけた。

中国が設立を目指す「世界人工知能協力機構」は、米国との影響力争いに挑む構想を体現するものになるとみられる。

仮に中国にとって有利なルールが整えば、2033年までに4兆8000億ドル(約723兆円)に達すると見込まれるAI市場で、米国勢と競い合う中国企業にとって追い風となる可能性がある。

多くのWAIC参加国は、最先端のAI半導体こそ米国が供給を主導しているものの、中国企業もすでに競争力のあるソリューションを提供していると認識している。

チャイナ・グローバルサウス・プロジェクトのエリック・オランダー氏は、米オープンAIが展開している大規模AIシステムの導入が難しい低所得国にとって、「中国が提供するAI製品群は、計算能力や電力インフラの面で極めて魅力的な選択肢となる」と指摘した。

中国外務省によると、WAICには70以上の国・地域から800社を超えるAI関連企業が参加したという。

 

中国政府はテクノロジーを「呼び水」としても「看板」としても活用。今回の新組織提唱は中国企業を通信インフラの中核に据える「デジタルシルクロード」構想の延長線上にあるものとみられる。

中国は第5世代(5G)など新しいテクノロジーの国際的な基準作りを主導しようと、自国企業が海外市場でシェアを拡大しやすいよう環境を整えてきた。

米政府が華為技術(ファーウェイ)製品の使用を規制するようになったきっかけの一つが、複数の標準化団体で同社が存在感を増してきたことだった。

上海でのAI会議はヒト型ロボットが主役だった

原題:China Vies to Unseat US in Fight for $4.8 Trillion AI Market (1)(抜粋)

--取材協力:Zheping Huang.

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