米銀最大手のJPモルガン・チェースと暗号資産(仮想通貨)交換業のコインベース・グローバルは、顧客の銀行口座と暗号資産ウォレットを直接リンクする取り決めに合意し、署名したと、30日に文書で発表した。

銀行口座とウォレットは来年、連結されるという。

資産家のタイラー・ウィンクルボス氏を含め、仮想通貨およびフィンテックの業界幹部からは、JPモルガンの動きを非難する声が相次いでいる。ウィンクルボス氏は同氏の仮想通貨交換プラットフォーム、ジェミニをJPモルガンが顧客として受け入れないのは、自分が同行を批判したためだと主張している。

銀行がフィンテック企業と直接の関係を築くことで、MXテクノロジーズやAkoyaといったデータアグリゲーターは、フィンテックとの関係を失いかねなくなる。データアグリゲーターはこれまで、企業と銀行間でデータを仲介する裏方的な役割を果たしてきた。

しかしコインベースの広報担当者は、データアグリゲーター各社との間で既存の関係を維持すると確認し、JPモルガンの提携もこうした関係に加わるものだと述べた。

今回のような提携はコスト削減につながる可能性があるが、規模が異なる全ての企業が提携を目指して交渉し、データアグリゲーターとの関係を断ち切ることが現実的かどうかは不明だ。JPモルガンの広報担当者は他のフィンテックと交渉する余地があるかどうかについて、コメントを控えた。

JPモルガンの顧客は同行のクレジットカードを使って、コインベースの口座に資金を移すことが可能になる。両社発表によれば、これは今年の秋にも始まる見通し。またクレジットカードのポイントを使って、コインベースのウォレットの残高を増やすことも可能になるという。

合意の背景にある規制環境は不透明だ。米消費者金融保護局(CFPB)は現在、金融データに関する消費者の権利を規制するルールを見直している。バイデン前政権は銀行が顧客データへのアクセスを第三者に与え、その引き換えに手数料を請求してはならないとのルールをまとめた。CFPBはこのルールに関する法的係争の停止を請求し、連邦裁判事は29日、これを認めている。

コインベースは資産運用会社PNCファイナンシャル・サービシズ・グループとも、PNCの顧客が口座を使って暗号資産を取引できるようにする方法を検討するため、初期段階の合意を結んでいる。

原題:JPMorgan, Coinbase Ink Deal to Link Users’ Bank, Crypto Accounts(抜粋)

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