マイクロソフトは、オープンAIの重要な技術を継続して利用するための新たな契約に向けて詰めの協議を行っている。合意に達すればオープンAI側が営利企業への転換を目指す上での障害が取り除かれる可能性がある。

事情に詳しい2人の関係者によると、オープンAIがより高度な汎用(はんよう)人工知能(AGI)の開発目標を達成したと判断した場合でも、マイクロソフト側がその最新モデルを利用できる条件で協議を進めているという。AGIとは、AIが広範なタスクで人間と同等の能力を持つという概念。

現行の契約では、オープンAIがAGIの開発を達成した場合、一部の権利を失う可能性があるマイクロソフトは、契約が2030年に終了した後も継続して重要技術にアクセスしたい考え。

非公開情報を理由に匿名で語った3人の関係者によると、数週間以内に合意が成立する可能性がある。オープンAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)とマイクロソフトのサティア・ナデラCEOは今月協議したという。

協議は前向きに進んでいるが、関係者によると最終的な合意には至っておらず、今後新たな障害に直面する可能性もあるという。

オープンAIの営利化を巡る交渉は数カ月にわたって続いてきた。オープンAIに約137億5000万ドル(約2兆円)出資し同社の知的財産を使用する権利を握っているマイクロソフトは、出資者の中で再編計画に最も抵抗しているとブルームバーグは報じていた。

両社は取材に対してコメントを控えている。

ゴールドマン・サックス・グループのグローバル投資調査マネジングディレクター、カシュ・ランガン氏は、マイクロソフトがオープンAIと新たな契約を締結することで自社のAIサービスを引き続き改善できると述べた

揺らぐ協力関係

両社のパートナーシップはAI時代の幕開けを告げるものだった。マイクロソフトは、対話型人工知能(AI)「ChatGPT(チャットGPT)」の基盤となる大規模言語モデル(LLM)の開発に使用するスーパーコンピューターを構築。見返りとしてその技術を自社製品に組み込む権利を得た。

しかしこの関係は、23年11月にオープンAIの取締役会がアルトマン氏を解任したことで悪化し始め、マイクロソフトのオープンAIに対する信頼を揺るがすものとなった。アルトマン氏はその後、復帰している。

両社は現在、消費者向けのチャットボットや企業向けAIアシスタントなどの市場で顧客の獲得競争を繰り広げている。表向きには緊密な関係をアピールしているが、オープンAI側はマイクロソフトへの依存度を下げようとしており、他の競合企業と共同でデータセンターやAIインフラの構築を進めている。

ここ数週間にわたり、両社は再編後のオープンAIに対するマイクロソフトの出資比率を巡って協議を進めてきた。関係者の1人によると、30%台前半から半ばの範囲で調整が進められているという。出資比率を巡っては英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が先に報じていた。

別の関係者によると、マイクロソフト側は出資比率などの契約変更に応じられないと判断した場合、協議を打ち切って現行契約を維持する考えだという。

ゴールドマン・サックス・グループのアナリスト、カシュ・ランガン氏は29日、ブルームバーグテレビジョンに対して「もし契約が締結されれば、少なくとも投資家からみると大きな障害が取り除かれることになるだろう。両社にとって大きなメリットがある」と述べた。

マイクロソフトは、オープンAIの重要な技術を継続して利用するための新たな契約に向けて詰めの協議を行っている

原題:Microsoft Nears OpenAI Agreement for Ongoing Tech Access (1)(抜粋)

--取材協力:Edward Ludlow.

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