Q. 米国の貿易交渉の状況は?

A. 米国が日本とEUに相次いで(暫定的な)貿易合意に達したことにより、これらの合意国・地域が米国の輸入に占めるシェアは30.6%(2024年実績)に及んでいる。

今後は米国の輸入シェアが大きいメキシコ、中国、カナダの交渉の行方が焦点となる。

なお、米国は対中関税の引き上げ期限(現状の30%から54%への引き上げ)を8月12日に迎える一方、ベッセント財務長官は7月24日に同期限を90日延長する可能性を示唆している。

なお、足下の米国の実効関税率は16.6%と、2025年初時点の2.4%から14.1%pt上昇したと試算される。

トランプ政権が8月1日に(7月上旬公表の)書簡通りに相互関税率を引き上げる場合、実効関税率は18.6%(+16.2%ptの上昇)に達する。

これは短期的なインフレ率を+1.76%pt押し上げ、実質GDP成長率を-0.78%pt押し下げる見通しだ。

米国における4~6月期実質GDP成長率(7月30日公表予定)は個人消費の底堅い推移等を背景にプラス成長へと回帰する見通しである一方、企業は夏ごろにかけて本格的に関税分の価格転嫁に踏み切ると見込まれ、こうした影響は7~9月期以降に徐々に顕在化する可能性が高い。

また、トランプ政権が半導体や医薬品への追加関税に踏み切る場合、こうした負の影響はより一層拡大するだろう。

※なお、記事内の「図表」に関わる文面は、掲載の都合上あらかじめ削除させていただいております。ご了承くださいませ

(※情報提供、記事執筆:第一生命経済研究所 経済調査部 主任エコノミスト 前田 和馬)