(ブルームバーグ):ニューヨーク市マンハッタンのパークアベニュー345番地にあるオフィスビルで28日夕(日本時間29日午前)、銃撃事件が発生し、容疑者を含む少なくとも5人が死亡した。ビルには、世界最大の資産運用会社ブラックストーンや米プロフットボールNFL、KPMGなどが入居。現場は混乱し、数時間にわたり恐怖に包まれた。

市当局者や関係者によると、警官1人が死亡した。ブラックストーンは、傘下の不動産投資信託の最高経営責任者(CEO)などを務めるウェスリー・ルパトナー氏(43)が犠牲になったと発表した。
複数の負傷者も出ているという。NFLコミッショナーのロジャー・グッデル氏は、銃撃でNFLの職員1人が重傷を負い、病院で治療中との声明を発表した。
容疑者の遺体は33階で発見された。同じ階には創業約100年の不動産会社ルディン・マネジメントが入居している。
当局は、銃撃犯をネバダ州出身のシェーン・タムラ容疑者(27)と特定した。
ニューヨーク市警察のジェシカ・ティッシュ本部長によると、防犯カメラの映像には、タムラ容疑者が黒いBMWから降り、ライフルを抱えてビルに入る様子が映っていた。同容疑者はビルのロビーで警察官と警備員を含む4人を銃撃した後、エレベーターで33階にあるルディンのオフィスを訪れ、女性1人を殺害。その後、自ら命を絶ったという。

警察関係者によると、タムラ容疑者はNFLのオフィスがある5階に行くつもりだったが、誤って別のエレベーターに乗り、33階のルディンのオフィスに到着したという。
タムラ容疑者の所持品から見つかった声明文やメモには、頭部外傷によって引き起こされる慢性外傷性脳症(CTE)への執着が記されていたと、捜査当局は述べている。彼のソーシャルメディアの投稿からは、頭部の負傷によりアメフトのキャリアを終えたこと、NFLがCTEへの対応を十分にしていないとする不満が読み取れた。
ティッシュ氏によると、タムラ容疑者には精神的な問題の履歴があった。同容疑者は車で米国を横断し、28日にニューヨークに到着したとみられる。
事件はマンハッタン中心部のミッドタウンで発生。現場一帯は多数のパトカーで封鎖され、上空にはヘリコプターも出動するなど、一時騒然となった。現場の近くには在ニューヨーク日本総領事館もある。
ビル内で撮影された映像には、狭い部屋に身を寄せ合って隠れる人々や、恐怖で泣き出す者、警察が各フロアを確認していく中で、両手を挙げて退避する従業員たちの姿が映っていた。ブラックストーンの社員たちは、現場で何が起きているのか情報が錯綜する中、一部はドアや出入り口を必死で封鎖しようとしていたという。社員の1人は、ソファを天井近くまで積み上げてバリケードを築いた様子の写真を共有した。
ブラックストーンのオフィスは30日に閉鎖され、今後1週間は閉鎖が続く見込みだ。
市の緊急通知システムによると、現場周辺では警察の活動が続いており、道路封鎖などのため、パークアベニューと53丁目付近には近づかないよう呼びかけている。
アダムズ・ニューヨーク市長は「付近にいる場合は安全確保に努め、パークアベニューとイースト51丁目の近くでは外出しないよう」とX(旧ツイッター)を通じ促した。

不動産部門を統括
銃撃事件で亡くなったルパトナー氏は、2014年にブラックストーンに入社し、主要部門のコアプラス不動産事業を統括していた。事業の成長とともに社内で急速に昇進し、今年、データセンター、賃貸住宅、倉庫などに投資する資産を保有する不動産投資信託のCEOに就任した。
ブラックストーンは29日、「言葉では表せないほどの深い悲しみに包まれている。彼女は卓越した才知と情熱、温かさ、寛大さを備え、社内外から深く尊敬されていた」との声明を発表した。
原題:Gunman Kills Four and Himself at Midtown Manhattan Building (2)、NYC Gunman Targeted the NFL But Ended Up on Rudin’s Floor (1)、Blackstone’s Wesley LePatner Killed in Manhattan Shooting (2)(抜粋)
(詳細を追加し更新します。更新前の記事で、英文の訂正によりデックおよび本文3段落目の33階の入居者に関する記述を削除しました)
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