(ブルームバーグ):ブルームバーグの調査によると、日本銀行が追加利上げを行う時期は10月または来年1月になると日銀ウオッチャーはみている。調査はトランプ米大統領が日本との関税合意を発表する前に実施した。
エコノミスト56人を対象に16-22日に行った調査では、日銀は30、31日に開催する金融政策決定会合で政策金利を0.5%程度に据え置くと全員が予想した。10月の追加利上げを見込むエコノミストは6月会合前の調査の30%から32%、1月は34%から36%にそれぞれ増えた。8割が1月までに利上げがあるとみている。
調査リポート:日銀7月会合は全員が現状維持、次回利上げ1月が最多

トランプ米大統領は日本時間23日、日本からの輸入品に15%の関税を課すと発表した。これまで8月1日から適用の予定だった25%から引き下げた。同日までに合意を予想したエコノミストは12%にとどまっていた。石破茂首相は、米国が日本車への関税を25%から15%に引き下げることにも合意したと発表した。
三井住友銀行のエコノミスト、武本淳也氏は、「仮に日米関税協議が8月1日までに決着するのであれば、物価基調が良好な中で、9月ないしは10月利上げの可能性がある」と指摘。その上で、今回の会合で公表される経済・物価情勢の展望(展望リポート)の見通しや物価基調への判断に「タカ派な姿勢が打ち出されるかに注目したい」としていた。
日銀の内田真一副総裁は23日、日米関税協議の合意を受け、日本経済を巡る不確実性が低下し、2%物価目標の実現確度が上がるとの見解を示した。高知県金融経済懇談会で講演後の記者会見で語った。
エコノミストの多くが関税交渉は長期化するとみていた一方で、半数近くは政府が交渉によって関税率を引き下げ、日本経済への影響を軽微に抑えられると回答。25%は悲観的な見方を示していた。
経済・物価見通しが焦点に
日米関税交渉が合意に達したことで、来週の会合では日銀の新たな経済・物価見通しが主な焦点となる。今年に入って消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)が前年比3%以上で推移していることから、日銀は物価見通しを引き上げ、物価見通しのリスクバランス評価も修正するとの見方もある。
BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは、物価見通しの修正幅、基調的な物価上昇率についての評価を変えるか否かが会合での注目点だと指摘。基調的物価の評価などについて「多少なりとも変化があるのか、注目したい」としている。
参院選では石破政権を支える自民・公明の連立与党が歴史的な敗北を喫し、衆院に続いて参院でも過半数を割り込んだ。参院選結果が日銀の金融政策に及ぼす影響に関しては、35%が「追加利上げの後ずれ」と答え、「追加利上げの前倒し」はゼロ。「特に影響はない」が38%だった。
財政支出
市場が注目するのは、政府による新たな財政支出の規模だ。石破政権は、物価の高止まりに苦しむ家計を支援するため、現金給付を公約に掲げた。一方、野党の多くは、政治的に調整が難しい消費税減税を提案している。
財政支出のさらなる拡大が日銀の金融政策に与える影響については、エコノミストの間で見解が分かれた。30%が「追加利上げの前倒しを促す」とし、20%は「追加利上げの後ずれを促す」と回答した。「特に影響はない」は20%だった。
住友生命保険の武藤弘明エコノミストは、「参院選の結果を受けて、財政拡張圧力は強まる」と予想。その上で、「ポリシーミックス的に考えても、日銀の追加利上げのハードルは高くなったと判断される」との見方を示した。
--取材協力:青木勝.
もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
©2025 Bloomberg L.P.