(ブルームバーグ):23日に実施される40年利付国債の入札は石破茂首相が参議院選挙で歴史的な敗北を喫した後、初めて行われる国債の発行で、償還期間が10年を超える超長期債に対する投資家の需要を占う試金石となる。
20日の参院選で自民・公明の連立与党が衆院に続いて過半数を割り込んだ。消費税減税を掲げる野党の影響力が強まる中、市場では財政拡大への懸念が再燃している。選挙結果を受けた22日の国債市場では、超長期債の利回りが軒並み上昇。国債の値動きが、短期金利の指標である翌日物金利スワップ(OIS)に比べて鈍いことも、市場が財政リスクに対して強い警戒感を抱いていることを示唆している。
石破首相は22日、日米関税交渉の進展を見極め、近く進退を判断する意向を周辺に伝えたと読売新聞(電子版)が報じた。首相の続投表明で和らいでいた過度な財政規律悪化への懸念が再び高まりやすい。
三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジストは、「早期の石破首相の退陣観測から財政悪化懸念が意識されており、40年国債入札は応札に慎重にならざるを得ない」と話す。弱い結果になれば一段と金利上昇圧力が強まるとの見方を示した。
また、トランプ米大統領が日本と貿易交渉で合意に達し、日本からの輸入品に15%の関税を賦課すると明らかにした。当初の25%からは下がるものの、実際に発動され日本経済が打撃を受ければ財政拡大への圧力が一段と強まり、債券には売り圧力がかかる。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の鶴田啓介シニア債券ストラテジストは、政治情勢の先行き不透明感や財政政策を巡る不確実性の高さは一層強まっており、応札の手控え要因になるとして弱めの結果になりやすいと述べた。
ブルームバーグ・ストラテジストの見方:
「日本国債の落ち着きは長続きしそうにない。政府は、少数政党の支持を取り込むためにも今後さらなる財政拡張策を進めざるを得ないだろう。40年国債入札については、順調な結果を見込むのは難しい。世界的に利回り曲線(イールドカーブ)のスティープ(傾斜)化が進んでおり、こうした構造的な流れも不安定な地合いに拍車をかけている」
— MLIVストラテジスト、マーク・クランフィールド、関連記事はMLIV
日本銀行の内田真一副総裁は40年債入札当日の23日に講演を行う予定で、金融政策のスタンスも債券市場を左右する材料となりそうだ。
T&Dアセットマネジメント債券運用部の浪岡宏チーフ・ストラテジスト兼ファンドマネジャーは、関税交渉だけでなく政治的な不透明感も日銀にとって悩みの種となり、「年内の利上げも状況によっては難しくなるかもしれない」と指摘する。短期ゾーンには金利低下圧力が加わりやすいが、利回り曲線は「スティープ化した状態が続き、超長期金利は高めで推移する」とみている。
入札結果は午後零時35分に発表される。市場は需要動向を示す応札倍率に注目している。需要の強弱を測るもう一つの重要な指標がテール(落札価格の最低と平均の差)で、値が大きいほど低調な結果とされる。
(第3、第5段落を追加し、コメントを差し替えました)
--取材協力:山中英典.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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