資産運用会社ダブルライン・キャピタルのジェフリー・シャーマン副最高投資責任者(CIO)は、トランプ米大統領が連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長を更迭するリスクに備えた債券取引を支持する投資家の1人だ。

シャーマン氏は21日、ブルームバーグテレビジョンの番組「ETF IQ」に出演し、「われわれも皆が話しているのと同じ取引をしている」と発言。利回り曲線(イールドカーブ)のスティープ化を見込んだ取引だとし、約10カ月前からこの取引を手がけていると語った。

ジェフリー・シャーマン氏のインタビュー映像

来年5月にFRB議長の任期満了となるパウエル氏をトランプ氏が近く交代させる可能性が高いと先週報じられたことで、この取引が再び注目を集めた。トランプ氏は以前から利下げに動くのが遅過ぎると、パウエル議長を繰り返し批判。一方でパウエル氏は、トランプ政権の関税措置の影響を見極める時間が必要だとして、即時の金融緩和には慎重な姿勢を示してきた。

ホワイトハウスのレビット大統領報道官は21日、トランプ氏に「FRB議長を解任する計画はない」と表明した。だが、トランプ氏が近くパウエル氏の後任を指名する可能性もあるとみられており、パウエル氏が任期を全うする場合でも、市場は後任候補の動向にさらに注目し始めると考えられる。

シャーマン氏は「影のFRB」という考え方がこの取引を後押しすると述べた。同氏が運用する上場投資信託(ETF)「オポチュニスティック・コア債券ETF」でこのポジションを取っているという。

この取引では米2年債を買い、10年債を空売りする。米金融当局が利下げに近づいているとの観測が強まる局面で人気化する傾向がある手法で、金融政策の変化に敏感な2年債が恩恵を受けやすい。一方、利下げでインフレ懸念が高まり、長期債利回りは上昇する可能性がある。

最近では米経済の底堅さを背景に、金融緩和の余地が限られていることから、この取引は一時的に失速していた。しかし、トランプ氏が指名する次期議長が利下げを望む大統領の意向に沿う可能性が高いとの観測から、トレーダーらはこの取引を再開している。

シャーマン氏は「市場はパウエル氏の任期を問題にせず、その先に目を向け、新議長就任と同時に利下げが行われると見込んでいる」と指摘した。

原題:DoubleLine’s Sherman Preps for ‘Shadow Fed’ to Drive Rates Down(抜粋)

--取材協力:Scarlet Fu、Ye Xie.

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