SMBC日興証券の相場操縦事件で、金融商品取引法違反(相場操縦)の罪に問われた元副社長ら5被告の判決公判が22日、東京地裁(江口和伸裁判長)で開かれ、全5被告に対して執行猶予付きの有罪判決を言い渡した。

判決内容は、元副社長の佐藤俊弘被告と元専務執行役員のトレボー・ヒル被告は懲役2年6月、執行猶予5年(求刑はそれぞれ懲役2年6月)、元執行役員のアレクサンドル・アヴァキャンツ被告は懲役1年6月、執行猶予3年(同懲役2年)、元エクイティ部長の山田誠被告に懲役3年、執行猶予5年(同懲役4年)、元エクイティ・プロダクト・ソリューション部長の岡崎真一郎被告は懲役2年、執行猶予4年(同懲役2年)だった。

江口裁判長は一連の取引について、株価の大幅な下落を回避し、安定させる目的をもって買い付けが行われ、法に違反したと説明した。被告らの共謀を認定した。

順法精神やコンプライアンス意識が欠如、弛緩したSMBC日興証券内の風土やこれを許容する組織体制そのものが、山田被告らが多数回の違法な安定操作に及ぶことに至った重要な誘因と厳しく指弾した。

ヒルとアヴァキャンツの両被告については、山田被告から受けた買い支えの報告を理解していたと指摘した。佐藤被告に対しても、山田被告が違法な安定操作を行うことを知った際に問題点を指摘して止めるべき立場だったにも関わらず、同被告に対応を一任していたなどと非難した。

さらに、証券市場の仲介者として金融商品などの公正な取引の実現や投資者の保護に重要な役割を果たすべき証券会社に対する信頼を著しく害したうえに、日本の証券市場に対する信頼をも大きく傷つけたと批判した。

佐藤俊弘被告(22日・東京地裁前)

市場のゲートキーパーとして公正性を確保することが求められる証券会社の副社長ら複数幹部が起訴された事件は、市場の信頼を大きく揺るがした。検察側は、繰り返し市場を安定操作した行為は組織ぐるみで歴史的に見ても突出して悪質だと厳しく指弾。一方、被告側は相場操縦には当たらず、共謀した事実もないと反論し、双方の主張は真っ向から対立していた。

佐藤被告は午前9時ごろ、ヒル被告は同9時10分ごろにそれぞれ東京地裁に入った。裁判は午前10時から始まった。休憩を挟み、午後2時40分ごろ終わった。最大の争点は、一連の取引が相場操縦に当たるのか、また、組織ぐるみの関与があったのかの2点だった。

裁判の終了後にブルームバーグの取材に応じた岡崎被告の弁護団は、不当な判決だとして控訴を検討すると明らかにした。

トレボー・ヒル被告

判決文によると、2019年12月から21年4月にかけて、上場企業の大株主から保有株式をまとめて買い取り、投資家に転売する「ブロックオファー」と呼ばれる取引で、立ち会い終了時間直前に大量の買い注文を入れるなどして株価を不正に維持したとされる。

SMBC日興による相場操縦事件を巡っては23年2月、同罪に問われた法人としての同社に罰金7億円と追徴金44億7000万円余り、杉野輝也元執行役員エクイティ本部副本部長に懲役1年6月・執行猶予3年の有罪判決が下っている。ともに起訴内容を認めていた。

(判決理由などを加えて記事を更新します)

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