参院選の結果を受けた国内政治の不透明感から円や株式のボラティリティーが高まる可能性があると、ストラテジストらは見ている。20日に投開票が行われた参院選で自民、公明の連立与党は非改選を含めた過半数を割り込んだ。

外国為替市場の円相場は21日、対ドルで一時18日のニューヨーク時間終値に対し0.7%高の1ドル=147円78銭まで上昇した。午後4時25分現在は148円15銭。大阪取引所の日経平均先物は3万9830円で日中取引を終え、18日の通常取引終値(3万9830円)と同水準だった。

市場参加者の見方は以下の通り:

ATFXグローバル・マーケッツのニック・トウィデール氏

政策の不透明感は日本の株式市場にとって好材料とはならないだろう。米関税の懸念が依然として残っており、新たな政治体制が状況をより複雑にする可能性がある。連休明けの22日には、日本株の売り圧力が強まる可能性があり、短期的には円安が進行するだろう。

バンテージ・マーケッツのアナリスト、ヘベ・チェン氏

自民・公明の連立与党が過半数を割り込んだ参院選の結果は日本の政治的不安定を再燃させる。日米の貿易交渉の期限が8月1日に迫る最悪のタイミングで起きたこの新しい変動の波は円への売り圧力をさらに高める可能性がある。日本株の展望はより複雑で、円安は輸出企業に短期的な好影響をもたらす可能性がある一方、政治的混乱の深刻化は投資家の信頼を損なうリスクがある

iファストのポートフォリオマネジャー、ホイ・シー・イェオ氏

石破氏は逆風にもかかわらず辞任を拒否し、政府の主要政策推進能力への疑念が高まる中、円と株式市場はヘッドラインに敏感になる可能性がある。選挙結果が市場変動を引き起こす場合、長期投資家にとって魅力的な水準で参入する絶好の機会となる可能性がある。継続する政治的不安定さは、政府の支出や債務管理に関する懸念が市場に反映されるため、当面は債券利回りが高水準で推移する可能性が高い。

T&Dアセットマネジメントの浪岡宏チーフ・ストラテジスト兼ファンドマネジャー

選挙結果を受け、日本銀行は年内の利上げを見送る可能性も出てきたとみる。躍進した参政党と国民民主党は金融緩和の方向に軸足を置いており、短期金利は抑制されそう。イールドカーブ(利回り曲線)がスティープ(傾斜)化し、金利差の面でも円は売られやすい。超長期の金利は高いが、財政拡張を背景としたネガティブな材料のため、円安に作用しやすい。参政党は株主偏重は直すべきだとの発言も見られ、日本株の重しになり得る

あおぞら銀行の諸我晃チーフマーケットストラテジスト

過半数割れが小幅にとどまり、石破茂首相の続投表明もあって過度な円売り圧力は和らいだ。与党が大幅に議席を失う展開や石破氏の退任を織り込んでいた円売りポジションを巻き戻す動きに加え、一つの政治リスクイベントが通過した安心感が円高という初期反応の背景。今週のドル・円相場は145円-150円のレンジで推移予想している。超長期国債利回りの上昇圧力は財政懸念によるもので、「悪い金利上昇」とされ、円買い材料にはならない

オーストラリア・コモンウェルス銀行(CBA)のシニアエコノミスト兼通貨ストラテジスト、クリスティーナ・クリフトン氏

日本は既に先進国の中で最も政府債務が多い国だ。財政支出や日米通商交渉への懸念が強まれば、今週ドル・円はさらに上昇するリスクがある。日本国債利回りの一段の上昇は、現在の市場環境下では円にとってマイナス材料となる

スタンダードチャータードのG10通貨調査責任者、スティーブ・イングランダー氏

短期的には、市場が米国との貿易合意の可能性をどう見るかにかかっている。合意が見込めない場合は、日銀に対する低金利維持の圧力がさらに強まり、円の下落リスクを高めるだろう

ナショナル・オーストラリア銀行の為替ストラテジスト、ロドリゴ・カトリル氏

石破首相が野党の協力を一部得ながら政権運営を担うという政治的に不透明感の強い局面になる。不確実性は通常、少なくとも初期段階では、円の支援材料となる傾向がある。一方で、選挙結果は全般的に日本資産にとって好ましいものでなく、円が上昇する局面では下落方向に賭ける

(2段落の相場数値を更新)

--取材協力:Winnie Hsu、Carmeli Argana、間一生、Matthew Burgess.

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