(ブルームバーグ):18日の米国債相場は上昇。短中期債を中心に利回りが低下した。ウォラー連邦準備制度理事会(FRB)理事が今月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合で他のメンバーが金利据え置きを支持しても、反対票を投じると示唆したことが買いを誘った。ミシガン大学の調査で、インフレ期待が低下したことも買い材料。
ミシガン大によると、1年先のインフレ期待は4.4%と、前月の5%から低下した。

LPLファイナンシャルのジェフ・ローチ氏は「インフレ見通し改善の兆候が投資家に歓迎されている」と述べた。「ミシガン大の統計によると、インフレの先行きは明るそうだ」と述べた。
ウォラー氏はインフレ期待が上昇する兆候はないと指摘。米労働市場が「瀬戸際」にあるとデータが示唆しているため、今月のFOMCで利下げをすべきだとする前日の講演で示した見解を繰り返した。
ナットアライアンス・セキュリティーズのアンドルー・ブレナー氏は「ウォラー氏の見解は正しいと思う。FRBの役割は、過去を振り返るのではなく、将来を見通すことだ。同氏は、雇用情勢の鈍化に関してまさにその役割を果たしている」と述べた。「とはいえ、7月の利下げは実現しないだろう」と予想した。
短期金融市場は引き続き、7月30日の次回会合での利下げの可能性をほぼゼロと予想している。年末までの予想利下げ幅は、月初の65ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)超から45bp程度に縮小している。

米国株
米株式市場では、S&P500種株価指数がほぼ変わらず。寄り付き直後に取引時間中の最高値を更新したが、その後は小幅安に転じ、午後は小動きとなった。
7月のミシガン大消費者マインド指数(速報値)は61.8と、5カ月ぶりの高水準となった。17日に発表された6月の小売売上高が幅広い分野で回復したことと合わせ、個人消費の後退懸念を和らげた。
ネーションワイドのマーク・ハケット氏は、マクロ経済指標は依然として全体的に支援材料となっており、最近の相場上昇は印象的だと述べた。ただ、より注目すべきは、ニュースが多く緊迫した状態の中で冷静な雰囲気が支配的な点だと語った。
「米消費支出の底堅さを示す堅調な経済指標と決算発表に前向きな反応が見られる」と述べた。「高いバリュエーションと期待感の中、決算シーズン後半は重要な試金石となるだろう。ただ、現在のモメンタムとセンチメントを考慮すると、相場は上振れの可能性が最も高い」と述べた。

外為
外国為替市場ではドル指数が低下。ウォラーFRB理事の発言を受けて、ドル売りが優勢になった。
ドル指数は2週連続で上昇し、2週間としては今年最大の上げとなった。
ドルに対する円は1ドル=148円台前半から後半の間でもみ合った。20日の参院選を控え、円は他の主要通貨全てに対して軟調だった。
三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)のストラテジストは、参院選を前に、戦術的な対ドルでの円ショートを推奨した。自民、公明両党が議席を減らす結果となれば、円は約3%下げるとみている。
デレク・ハルペニー、リー・ハードマン両ストラテジストは顧客リポートで「連立与党が過半数議席を失えば、円はさらに売り込まれる余地があるとの見方に変わりはない」と述べた。
原油
ニューヨーク原油相場は小幅安。ロシアのエネルギー輸出に対する欧州連合(EU)の対策が、市場の関心を集めた。
EU加盟国はロシアに対する新たな制裁パッケージを承認。石油価格の上限引き下げや新たな銀行規制が盛り込まれたほか、インドの大規模製油所も制裁対象となった。
CIBCプライベート・ウェルス・グループのシニア・エネルギー・トレーダー、レベッカ・バビン氏は「EUの措置は原油流通に劇的な打撃を与えないかもしれないが、石油製品への規制やシャドーフリート(影の船団)の取り締まり強化を受けて、ディーゼル市場で懸念が広がっている」と述べた。

原油相場は5月上旬から上昇基調にある。モルガン・スタンレーとゴールドマン・サックス・グループはいずれも、世界的に原油在庫が積み上がっているものの、それらは価格形成への影響力が小さい地域で起きていると分析している。
金融市場全体では、強い消費者センチメントを示す統計が米経済への不安を和らげ、リスクオンのムードを支えた。
原油先物市場は依然、逆ざやの状態となっており、需給のタイト感を示唆している。その一方で、石油輸出国機構(OPEC)と主要な非加盟産油国で構成される「OPECプラス」は、減産の巻き戻しを前倒しで実施している。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物8月限は、前日比20セント(0.3%)安い1バレル=67.34ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント9月限は0.3%下げて69.28ドル。
金
ニューヨーク金相場は反発。ウォラー理事が今月のFOMCについて、金利据え置きの決定ならば自分は反対票を投じる考えを示唆した。
ウォラー理事の発言を受けて米国債利回りとドルが低下し、金スポット価格は一時0.7%上昇した。金利が低下する環境は通常、利息を生まない金投資の追い風となる。
ウォラー理事発言の背景には、トランプ米大統領による強い利下げ圧力がある。それでも金利スワップ市場が織り込む7月利下げの確率はゼロに近い。年内の利下げ幅は約45ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)と織り込まれており、月初の65bp余りから縮小している。3日に発表された6月の米雇用統計が予想より強かったことが大きな要因とされている。

年初からの金相場上昇率は25%を超えている。地政学的緊張とドル建て資産への懸念で、投資家は資金を金へと避難させている。金相場は数カ月前から狭いレンジ取引が続く。米国と貿易相手国による交渉の行方や、政策金利の軌道、世界経済に関税が与える影響など、投資家は視界が明瞭になるのを待っている。
金スポット価格はニューヨーク時間午後1時46分現在、前日比12.49ドル(0.4%)高い1オンス=3351.46ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物8月限は13ドル(0.4%)上げて3358.30ドルで引けた。
原題:Treasury Yields Slide After Waller’s July Cut Call: Markets Wrap(抜粋)
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