トランプ米大統領が、ウクライナへの兵器供与の費用を欧州連合(EU)に負担させる方針を示したことで、防衛費の財源確保を協議するEU当局者に対し、圧力が高まっている。

これは1兆2000億ユーロ(約207兆5000億円)規模のEUの次期予算編成を巡る交渉に影響を及ぼしている。EU加盟国は合意形成に向けた2年間のプロセスを開始。多くの国が農業や地方などに対する従来型の予算配分を受け入れる考えを示す一方で、防衛など緊急性の高い新たな課題に資金を振り向けるよう求める声も上がっている。

チェコのリパフスキー外相は15日に記者団に対し、「優先課題は非常に多いが、資金は限られている」と述べ、防衛費は農業など既存の予算要求と競争しなければならないと指摘。交渉は「非常に困難」になるとの見通しを示した。

ウクライナで砲弾を準備している様子(6月19日)

EUの複雑な予算編成プロセスは、地政学的な変化の中で進められている。トランプ大統領は、欧州の安全保障や同地域のウクライナ支援の取り組みから距離を置く姿勢を示している。同氏は今週、「最上位」の兵器供与を約束する一方で、欧州の北大西洋条約機構(NATO)加盟国がその費用を負担すべきだと主張した。

EUの行政執行機関である欧州委員会は16日、2028年からの7年間にわたる次期予算案を公表する予定。

長年にわたり防衛費が低水準にとどまっていたEUが再軍備を加速する必要に迫られていることも、予算編成プロセスを複雑化させている。ロシアとウクライナの戦争が4年目に入り、米国の支援も揺らぐ中、欧州の軍事力強化の必要性が浮き彫りになっている。

ただ、トランプ氏が欧州の負担による兵器供与を提案したことに対しては、15日に冷ややかな反応も聞かれた。EUのカラス外交安全保障上級代表(外相)は、米国の兵器供与費用を欧州が負担することになれば、それは欧州による支援と見なされると警告した。

カラス氏は「われわれは既にウクライナ支援に最大限に取り組んでいる」とし、「皆が同じことを求められている。兵器を供与すると言いながら、支払いは他に任せるというのでは、それは本当の意味で自国による供与とは言えないのではないか」と述べた。

 

原題:Trump’s Plan for Europe to Foot Ukraine Bill Ups Budget Pressure(抜粋)

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