(ブルームバーグ):米マイクロソフトの株主グループが、同社の人工知能(AI)ツールを悪用する顧客をどれほど効果的に特定できるかを評価するよう同社に圧力をかけている。イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザでの戦争でマイクロソフトのソフトウエアを使用しているとの報道を受けた動きだ。
この株主提案は、マイクロソフトが自社製品の使用を巡り人権侵害や国際人道法違反につながらないようにどのような対策を講じているのかについて、より詳細な報告書を作成し公表するよう取締役会に求めている。同案は12月に予定されている年次株主総会で採決にかけられる可能性がある。
マイクロソフトの社員らは、イスラエル国防軍(IDF)やその他政府機関へのソフトウエア販売に抗議しており、同社のAIサービスがガザでの戦闘における民間人の殺害に加担していると主張している。
イスラム組織ハマスによる2023年10月7日のイスラエルへの攻撃では約1200人が死亡した。その後のイスラエルによる報復とガザの一部占領により、これまでに5万7000人余りが死亡していると、ハマス側の保健当局が発表している。
マイクロソフトは今年4月、創業50周年イベントを妨害した従業員2人を解雇した。
米AP通信や英紙ガーディアン、イスラエルの独立系ネットメディア「+972マガジン」によると、ガザでの戦争開始以降、イスラエルの軍および情報機関によるマイクロソフト製品の利用が拡大。それにはクラウドサービス「Azure(アジュール)」やオープンAIが開発したAIモデルが含まれているという。
APによれば、イスラエル軍は大規模な監視を通じて収集したデータからAIを使って特定のパターンを検出し、今後の攻撃対象となり得る人物の特定に活用しているという。
株主提案は「ジェノサイド(集団殺害)やその他の国際犯罪への加担が深刻に疑われているにもかかわらず、マイクロソフトの人権デューデリジェンス(HRDD)プロセスは機能していないように見える」としている。
今月提出されたこの提案は、総額約8000万ドル(約118億円)相当のマイクロソフト株を保有する約60人が署名している。
こうした株主決議は法的拘束力を持たず、株主の多くは経営陣の判断を尊重する傾向があるため、採決で過半数の支持を得ることはまれだ。
ただ、今回の提案は、イスラエルへの製品販売やそれに抗議した社員への対応を巡り、マイクロソフトが引き続き強い圧力にさらされていることを示している。
原題:Microsoft Investors Prod Company Over Work With Israeli Military(抜粋)
もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
©2025 Bloomberg L.P.