(ブルームバーグ):11日の日本市場では、円相場が対ドルで一時2営業日ぶりに147円台へ下落した。米国によるカナダへの関税通知を受け、日本などにも強硬姿勢を示すとの見方からドル買いが優勢となった。
トランプ米大統領は10日、カナダからの輸入品に8月1日から35%の関税を適用するとトゥルース・ソーシャルへの投稿で明かした。米国が交渉中の他の国に対しても強硬的な関税政策を進めた場合、相手国の景気に悪影響を及ぼす可能性がある。また、トランプ氏はNBCとのインタビューで、大多数の貿易相手国・地域に対し15%または20%の関税を一律に課す計画だとも述べた。
東海東京インテリジェンス・ラボの柴田秀樹金利・為替シニアストラテジストは「関税交渉は最終局面に入りつつある。4月2日は関税にドル売り・円買いで反応したが、今はドル買い・円売りとなっている」と指摘。最悪のシナリオに備えたポジションが出来上がり、交渉の落ち着きどころが見え始めたところで「解消の動きが強まりやすく、ドル・円の押し上げ要因になる」と言う。
外国為替
外国為替市場の円相場は、一時1ドル=147円台に下落。米国によるカナダへの関税通知を受け、日本などにも強硬姿勢を示すとの見方からドルが買われた。ドルには仲値に向けた実需の買いが入ったとの声も聞かれた。
あおぞら銀行の諸我晃チーフマーケットストラテジストは、カナダへの35%関税の話による米ドル買い・カナダドル売りに加え、「仲値にかけてややドル買いが入った」と解説。また、「週末のポジション調整の動きでドルが戻している部分もある」と話していた。
国際通貨基金(IMF)が今週公表したデータによると、世界の外貨準備で1-3月期に円からスイスフランに前例のない規模の大移動が起こり、円が安全資産としての魅力を失いつつあることが明らかになっている。
株式
株式相場はTOPIXが反発。米国の底堅い雇用環境や為替の円安推移を材料に自動車など輸出関連株の一角や海運、鉄鋼株などが買われた。米金利の上昇と金融株の上昇が後押しし、銀行や保険、証券など金融セクターも堅調。プライム市場の騰落銘柄数は値上がりが1152、値下がりが420。
ただ、トランプ米大統領によるカナダへの新たな関税賦課を背景に他国にも強硬な態度を取るとの懸念が相場全体の重しとなり、日経平均は軟調。業種では電気・ガスやサービスなど内需関連がさえない。個別では日経平均への寄与度が大きく、3-5月期の営業利益が予想を下回ったファーストリテイリングが大幅安。旧村上ファンド系が買い増したフジ・メディア・ホールディングスは急伸した。
T&Dアセットマネジメントの浪岡宏チーフ・ストラテジスト兼ファンドマネジャーは、米S&P500種株価指数が最高値を更新したことなどが買い安心感を誘う一方、米国への経済的依存が大きいカナダに対する関税の引き上げはかなり大きなリスクとして見られていると語った。
債券
債券相場は中長期債を中心に下落。前日の米長期金利が上昇した流れを引き継いだほか、財政拡張や需給に対する根強い懸念で売りが先行した。
三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジストは、債券相場は参院選を見据えた動きが続いていると指摘。今週前半に見られたような財政不安の広がりが、選挙が近づくに連れて再度意識されると述べた。
日本銀行は午前の金融調節で定例の国債買い入れオペを実施。対象は残存期間1年超3年以下、3年超5年以下、5年超10年以下、25年超で、買い入れ額はいずれも前回から据え置いた。オペ結果によると、残存5年超10年以下の応札倍率が前回から上昇して需給の緩みを示唆し、ほかの年限は低下した。
一方、超長期債は新発30年債利回りが低下するなど堅調。りそなアセットマネジメントの藤原貴志チーフファンドマネジャーは、今週までの超長期金利の上昇で選挙での自民党の苦戦をある程度織り込んだと分析。さらに悪い材料が出てこない限り、「30年債の複利利回り3%、20年債利回り2.5%から高い水準を売っていく動きにならない」との見方を示した。
新発国債利回り(午後3時時点)
この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。
--取材協力:長谷川敏郎、清原真里、近藤雅岐.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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