(ブルームバーグ):日産自動車は海外での潤沢な投資資金を追い風に、経営再建に向けて45億ドル(約6600億円)の外貨建て社債を起債した。財務懸念が残る中でも投資家の需要は旺盛で、発行額は当初計画を上回った。
日産が起債したドル建て債のうち1本は発行利率が8.125%となり、これまで最高だった1986年発行のドル債の7.5%を上回った。高利率が奏功し、ユーロ建てを含めた今回の社債には約110億ドルの投資家需要が集まった。
債券市場に潤沢な資金が流れ込む中、日産の社債もその恩恵を受けた。一部の投資家の間では、日本政府による支援や、将来的な提携や経営統合の可能性が需要を支えたとの見方もある。
アセットマネジメントOneの加藤晴康ファンドマネジャーは、「海外の投資家は日本の自動車業界には政府の支援があると安心感を持っており、日産についても最終的には支援されるとみている」と言う。さらに「アジア向けのポートフォリオは徐々に中国から日本へとシフトしており、そうした資金の流れも今回の需要を下支えした」と述べた。

日産は財務危機からの再建を目指しているが、その将来は依然として不透明だ。イバン・エスピノーサ最高経営責任者(CEO)は5月、世界17工場のうち7カ所を閉鎖し、2万人規模の人員削減を実施する計画を明らかにした。
オーストラリア・ニュージーランド銀行のシニアクレジットストラテジスト、ティン・メン氏は「市場には流動性が豊富にあるため、100億ドル規模の巨額取引であっても吸収は難しくない」と話す。日産に関しては「起債で流動性が向上し、再建計画が進展するとの短期的な安心感をもたらすものの、長期的な競争力には懸念が残る」と述べた。
アセマネOneの加藤氏は、「日本は金利が上がりそうな国で、米国は下がりそうな国」だとし、投資家は米利下げ前に買えば「トータルリターンで勝てると考えている」と指摘。こうした日米の金利見通しが日本企業の外債発行に追い風となっているとの見方を示した。
社債保証コストの観点では日産は依然として日本で最もリスクが高い企業だ。CMAのデータによると、信用リスクを示すクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)は10日に約391ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)と、2009年5月以来の高水準を記録。ソフトバンクグループの289bpや楽天グループの251bpを大幅に上回る。
日産の広報担当者は電子メールで、今回債への需要は海外投資家からの成長への期待と受け止めているとし、今後は国内で円建てでの資金調達も検討していくと述べた。
(投資家コメントを加え、全体を再構成しました)
--取材協力:稲島剛史.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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