経営再建中の日産自動車は社債の償還額が過去最高に達する来年を前に、債権市場での資金調達に本腰を入れ始めた。7日に総額1500億円の転換社債型新株予約権付社債(CB)を発行すると発表したほか、外貨建て社債の発行に向けた需要調査にも着手。実現すれば7000億円超の資金調達となる。

日産の発表によると、CBは米国を除く欧州やアジアを中心とする海外市場で募集を行う。償還期限は2031年7月15日。電気自動車(EV)といった電動車の開発資金などに充て、社債や第三者からの借り入れの償還・返済スケジュールを鑑みて償還年限を設定したという。

日産はまた、ドル建ておよびユーロ建ての普通社債を発行するため、投資家に対して購入意向や適正な利率水準を探る需要調査を開始した。事情に詳しい関係者が明らかにした。

関係者によると、ユーロ債は償還期間4年と8年の2本立てで、ドル債は5年債、7年債、10年債の3本立てとなる見通し。発行総額は40億ドル(約5800億円)を目指し、利率や発行額などの条件は今週後半に決定される。ブルームバーグのデータによれば、同社が外貨建て社債を発行するのは20年以来で、およそ5年ぶりとなる。

販売低迷に伴い日産の業績は急速に悪化する一方、同社とグループ会社で26年に多額の社債の償還期限を控えるほか、車の電動化や知能化に向け巨額の開発費用も必要だ。CB発行に伴い資金調達で一定のめどをつけた恰好だが、将来的に株式転換が進めば1株当たりの価値は希薄化するため株価の下押し要因となる恐れがある。

市場分析などを行うパラソル総研の倉持靖彦副社長は、今回の資金調達を「どう成長・構造改革に結び付けていけるか」が重要になると指摘。「構造改革と資本構成を含めた変化が見えてくるまで」投資家は動きを取りにくいと話した。

前日比大幅な下落で取引されていた日産の株価はCB発行の発表後に一時下げ幅を縮小する場面もあった。終値は同4.9%安の336.9円だった。

 

ブルームバーグ・インテリジェンスの吉田達生シニアアナリストは、今の日産にとって潜在的な希薄化よりも重要なのは「流動性の確保だ」と指摘。潜在的な希薄化の問題はあるものの、日産が流動性を確保する力があると示したことを株式市場はポジティブに評価したとの見方を示した。

(株価情報を追加し、記事構成を変えて更新します)

--取材協力:横山桃花.

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