トランプ米大統領はホワイトハウスで4日開いた式典で、自身の看板政策である大型減税・歳出法案に署名し、同法は成立した。減税措置の延長のほか、チップ収入を得る労働者への一時的な税制優遇、不法移民の取り締まり強化に向けた資金拠出などが盛り込まれた。

3兆4000億ドル(約490兆円)規模の同法は、トランプ氏が2024年大統領選の選挙戦で掲げていた一連の政策を取り込んでおり、法制化は同氏にとって大きな政治的勝利となった。トランプ政権2期目はこれまでのところ、立法ではなく大統領令による施策が中心だった。

同法成立は、トランプ氏が共和党内で引き続き強い影響力を有することを裏付けるものとなった。上下両院の議会指導部は今週、民主党議員の結束した反対や共和党内の異論を乗り越えて、トランプ氏が期限とした4日の独立記念日までに可決にこぎ着けた。トランプ氏自ら電話をかけるなどして反対派を説得し、慎重姿勢を示していた議員への圧力を強めた。

トランプ氏は署名の前に式典で、「まさに公約は守られた」と発言。強い米国を取り戻すための取り組みと自身が評する一連の対応に言及し、この法制化は「これまでで最大の勝利だ」と述べた。

減税・歳出法案の署名式のためホワイトハウス南庭に到着したトランプ氏とメラニア夫人

しかし、この立法上の成功はトランプ氏と共和党にとって大きな政治的リスクも伴っており、その影響は今後何年にもわたって尾を引く可能性がある。

今回の財政パッケージには、低所得層や失業者向けの医療・栄養支援といったセーフティーネット事業の大幅な削減と新たな行政手続きが盛り込まれている。米議会予算局(CBO)の試算では、同法に伴うメディケイド(低所得者向け医療保険)の変更で、約1180万人が医療保険を失う恐れがある。

こうした削減措置は、トランプ氏の政策への国民の支持を損なう一因となっており、世論調査でも不人気が示されている。

上院共和党の一部議員からは法案可決を前に、今後の選挙で不利になるとの声も上がっていた。議会民主党は、来年の中間選挙に向けて共和党を攻撃する材料として、こうした問題を追及する構えを見せている。

同法に伴う減税規模は4兆5000億ドルに上るが、その一部は歳出削減によって賄われる。企業は従来、再生可能エネルギーや電気自動車(EV)に対する優遇措置を受けて工場や風力発電所、太陽光発電施設などへの投資を全米レベルで進めてきたが、こうした措置は廃止される。

高齢者や子育て世帯への税優遇措置が拡大され、州・地方税(SALT)控除の上限が現行の1万ドルから今後5年間は4万ドルに引き上げられる。この引き上げは、ニューヨーク州やニュージャージー州、カリフォルニア州など高税率州選出の共和党下院議員らが強く求めていた。

原題:Trump Signs His Tax-and-Spend Bill at White House Ceremony (1)(抜粋)

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