(ブルームバーグ):スズキが6月の輸入車販売で、日本で長年支持を集めてきた独メルセデス・ベンツを抑えて再びトップに立った。逆輸入するインド生産車の「ジムニーノマド」がけん引役だ。魅力のある車種であれば生産地にこだわらない消費者の姿も浮かび上がる一方、米国車は低迷を続けている。
日本自動車輸入組合(JAIA)は4日、6月の輸入車新規登録台数でスズキが4780台だったと発表した。メルセデス(4730台)を僅差だが上回った。前年同月比で約230倍の大幅な増加で月間トップとなるのは4月に続き2度目だ。
ノマドは、「ジムニー」の全長を拡大した5ドア仕様で、4月に発売された同車は販売目標としていた月間1200台に対し約5万台の注文が入り、受注開始後わずか4日で受け付け停止となるほどの人気となった。受注再開に向け7月から増産することを発表しており、同社の輸入台数は今後さらに伸びる可能性が高い。スズキは昨年10月にはインドで生産した小型スポーツ用多目的車(SUV)「フロンクス」の輸入販売も始めている。
日本の米国車輸入受け入れ姿勢へのトランプ大統領の不満もあり、日米の関税交渉は行き詰まりの様相を呈している。だが、自動車大国の日本は必ずしも海外生産の車に門戸を閉ざしているわけではない。2024年まで10年連続で輸入車販売で首位を守り続けてきたメルセデスを筆頭に欧州車は日本で長年消費者の支持を集めてきた。最近ではスズキ以外にも国内メーカーによる逆輸入が急増している。

国内メーカーの逆輸入を後押ししているのはインド生産車だ。インドは人件費などが安く、現地生産の車はコスト面で競争力が高い点が最大の魅力だ。
ホンダも24年3月から販売を開始したインド生産の小型SUV「WR-V」が当初209万8800円から購入できた手頃な価格帯などで人気を集め、同社の昨年の輸入車登録台数は前の年比約22倍の4万5107台となった。今年1月から3月は単月で首位だった。
今年1-6月の累計ではホンダは約2万2037台と2万5016台のメルセデスに迫る2位、スズキが3位と上位に食い込んでいる。小型SUV「キックス」をタイから逆輸入している日産自動車も9位につけている。
専門家からは、ゼネラル・モーターズ(GM)やフォードなどの米国メーカーは市場に合わせた商品・仕様を作り込むという日系メーカーの姿勢を見習う必要があるとの声も上がる。

実際、今年1-6月の実績ではオフロード性能などに定評がある「ジープ」が4000台超と健闘しているが、欧州に本社を置くステランティスの傘下だ。GMやフォードの車ははるかに少なく、不人気ぶりは変わっていない。
自動車調査会社カノラマの宮尾健アナリストは、日本の消費者は「その車が欲しければタイ生産だろうが、インド生産だろうが、日本生産だろうがあまりこだわっていない」と話す。その上で、GMやフォードの車が日本で売れないのは軽自動車など日本の消費者が求める商品を投入していないためで、トランプ氏の主張は「お門違いだ」と断じた。
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