財務省が3日に実施した新発30年国債の入札は堅調な需要を集めたものの、国債利回りは上昇した。今回の結果は、発行減額が需給改善に一定の効果を上げたことを示す一方、世界的な財政支出への懸念を背景に金利上昇圧力が根強いことを浮き彫りにした。

入札結果によると、応札倍率は3.58倍となり、過去1年平均の3.33倍を上回った。水準は2月(3.74倍)以来の高さ。弱めだった前回入札より1000億円減額されたことで需要が回復した。最低落札価格は99円55銭と市場予想の99円75銭を下回った。

三菱UFJアセットマネジメント債券運用第二部の小口正之エグゼクティブ・ファンドマネジャーは、「最低落札価格は予想を下回ったが、応札倍率は過去3回と比べて高く、発行額が減った効果が表れており、需給は改善している」と述べた。

防衛費の増額や財政支出拡大への懸念から世界的に超長期債利回りが上昇し、国内でも5月に30年債と40年債の利回りが過去最高を記録した。金利の急騰を抑えるため、財務省は異例の国債発行計画の見直しを実施。4月以降、投資家需要が集まらない低調な結果が続いたが、金融当局の対応で債券相場も安定し、今回の入札では一定の需要が確認された。

ただ、入札後の債券市場では超長期債利回りが上昇。参院選通過後の財政拡大への警戒や構造的な需給不足への不安が根強く、30年債利回りは一時前日比8ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)高い2.965%を付けた。40年債利回りも8bp、20年債利回りは7bpまで上げ幅を拡大した。

海外からの金利上昇圧力も懸念材料だ。英国では2日、リーブス財務相の交代観測をきっかけに財政への懸念が広がり、英国と米国の30年国債利回りは大幅に上昇していた。

 

アクサ・インベストメント・マネージャーズの木村龍太郎シニア債券ストラテジストは、今回応札倍率は上昇したが、発行額が減った分を「割り引いて評価した方が良く、実態はもっと弱めだろう」と指摘。「超長期債の安定的な消化に安心感を持てるような結果ではない」と話した。

ブルームバーグのストラテジストは次のように指摘する:

「30年債入札は順調な内容となったが、本当の試練はこれからの流通市場にある。過去最高の30年利回り約3.2%と比較して、利回り2.8%前後は魅力に乏しい」

財務省は2025年度の超長期国債の発行額を合計3兆2000億円減額する一方、調達減を補うために2年債や国庫短期証券の発行を増やし、5年や10年債は発行規模を維持する方針を決めた。

--取材協力:日高正裕.

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