(ブルームバーグ):米国立ハリケーンセンター(NHC)の予報官は1週間前、ハリケーン「エリック」がメキシコの太平洋岸に上陸する際に急激に勢力を強めると正確に予測した。こうした予測に貢献してきた重要な観測ツールが今月末で使えなくなる方向で、大西洋のハリケーンシーズンが例年以上に活発になると予想される中、代替手段の見通しも立っていない。
米海軍と米海洋大気局(NOAA)は6月30日をもって、長年運用してきた「防衛気象衛星計画(DMSP)」からの観測データの受け入れと配信を終了すると25日に通達した。
この衛星データは、風速が24時間で時速35マイル(約56キロ)以上高まる「急発達」を予測する上で特に重要とされてきた。弱い熱帯暴風雨が急激に発達すると、沿岸地域の住民に深刻な被害をもたらす恐れがあり、緊急対応体制にも大きな負担がかかる可能性がある。
近年、急発達するハリケーンは増加傾向にあり、昨年の「ミルトン」もその一例だ。ミルトンはわずか1日余りで熱帯性暴風雨から5段階中最強のカテゴリー5のハリケーンに発達した。ミルトンの勢力は上陸時にはカテゴリー3に弱まったが、昨年メキシコを襲ったハリケーン「ジョン」など、上陸直前まで勢力を増すケースも少なくない。
元NOAA気象学者のアラン・ジェラルド氏は他の衛星が「雲頂レベル」しか観測できないのに対し、DMSPのデータは暴風雨の内部構造を分析する貴重な手段だったと指摘した。
DMSPの最初の衛星は1962年に打ち上げられており、機器はすでに耐用年数に近づいている。米海軍は今年、新たな気象衛星の運用を開始したが、NOAAの予報官らがそのデータにアクセスできるかどうかは明らかでない。軍当局者にコメントを求めたが、返答はなかった。
NOAAの広報ディレクター、キム・ドスター氏は27日の声明で、DMSP以外の衛星データやNOAAの気象観測機など、さまざまな情報源が引き続きモデルに反映されているとし、NOAAのデータ体制について「米国民に提供する最高水準の気象予測を支えるのに十分なものだ」と説明した。
これに対し、元NHC予報官ジェームズ・フランクリン氏は、NOAAは今回失われるセンサーに代わる手段について説明していないと指摘。「データの提供が止まれば、暴風雨の内部構造や組成の把握が困難になり、急発達の予測が遅れる」と警告した。
原題:US to End Access to Key Tool to Predict Hurricane Strength (2)(抜粋)
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