英国で食品の値上がりが目立っている。景気停滞の兆しが見られる一方、インフレの高止まりリスクは高まっており、イングランド銀行(英中央銀行)の利下げペースは鈍る恐れもある。

バターや牛肉、チョコレートなどの価格は5月に前年同月比20%近く上昇。食品全体の伸びは昨年2月以来の大きさとなった。小売業者が国民保険料の引き上げや最低賃金の上昇、包装コストの増加分を消費者に転嫁したこともこれに拍車をかけた。

今回の値上がりは中銀当局者の注意を引くには十分で、イングランド銀の金融政策委員会(MPC)は先週、政策金利の据え置きを決定。労働市場の軟化や経済減速にもかかわらず、金融緩和を漸進的なペースにとどめるとの方針を堅持した。会合の議事要旨では、食品価格の上昇が労働者の賃上げ要求につながり、インフレ圧力が持続する可能性への懸念が示された。

EY・ITEMクラブのチーフエコノミックアドバイザー、マット・スワネル氏は「食品値上がりによるインフレ期待への影響については、MPCが今後数カ月、細心の注意を払うだろう」と指摘。「慎重かつ段階的に利下げを進めるというメッセージは変わっておらず、失業率の大幅上昇の可能性よりもインフレ率が2%超で定着するリスクをなお懸念している」と語る。

イングランド銀がこうした慎重姿勢を維持し、政策金利を4.25%に据え置いたことで、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)後の高い借り入れコストに悩まされる企業や消費者、住宅所有者の負担軽減は先送りされることになった。

5月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比3.4%上昇。調査では、家計が今後1年もインフレ率がイングランド銀の目標である2%を大きく上回ると見込んでいることが示された。当局はこうした予想が定着した場合の波及的な影響を警戒している。最近の研究では、食品価格がインフレ期待に最も大きな影響を及ぼすことが明らかになっている。

キャピタル・エコノミクスの副主任エコノミスト、ルース・グレゴリー氏は「消費者は食品を頻繁に購入するため、その価格には非常に敏感だ」と指摘する。

政府の政策変更で小売業者のコストが上昇し、食品価格を押し上げた面もあるが、全てが国内要因とは限らない。他国・地域での悪天候による不作も影響しており、コートジボワールではカカオの収穫不足で供給に深刻な問題が生じ、英国のチョコレート価格は18%上昇した。

イングランド銀が19日公表したリポートでは、「大手スーパーマーケットはいずれも利益率の圧迫に直面しており、コスト増を吸収しようにも限界がある」と報告された。

原題:Surging UK Grocery Bills Threaten to Rekindle Inflation Fears(抜粋)

もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp

©2025 Bloomberg L.P.