「猛暑」と「空梅雨」。コメづくりにはどのような影響があるのでしょうか。この異常な暑さに負けないための様々な対策や努力を取材しました。

1株だけ猛暑に耐え抜いた「奇跡のコメ」は何が違う?

井上貴博キャスター:
2025年もまたコメ不足になるのか?猛暑と空梅雨がコメの生育にどう影響するのか?Nスタが調べてみたら「奇跡のコメ」が見つかりました。

2025年も猛暑はほぼ間違いなさそうですが、夏が暑いと、コメは▼収穫量の減少と▼品質の低下というリスクがあります。

農水省HPに掲載の写真を見比べると、正常なお米より、不良米は中が白濁としています。食味がよくないので、やはり品質が下がってしまうということです。

そこで、暑さに強い「高温耐性品種」の開発が必要ということになりました。高温耐性品種は▼きぬむすめ、▼こしいぶき、▼つや姫、▼とちぎの星、▼ふさこがね、▼にこまるなど、農水省のHPを調べただけでも26種類あります。

高温耐性品種の作付面積割合は、2017年産は6.8%だったところ、2024年産は16.2%まで増えました(農水省HPより)。数多くの研究者の皆さんの汗が、こういうことにつながっているのだと思います。

では、高温耐性品種とはどのようなものなのでしょうか。高温耐性品種を育てて2年目の岡山の農家に取材したところ、味はコシヒカリと同等です。また、背が低いため、風の影響を受けづらいというメリットもあるそうです。

なぜもっと流通しないのか聞いてみると、他品種より肥料が多く必要でコストがかかることに加え、おいしくないイメージがあるのだと嘆いていらっしゃいました。

確かに昔は少し味が落ちるものだったのですが、今は品種改良されたため、銘柄米とほぼ同じでとてもおいしいとおっしゃっていました。

さて、「奇跡のコメ」とは、何が奇跡なのでしょうか?

“日本一暑い町”ともいわれる埼玉県熊谷市では、暑さに強いコメの開発・生産を進めており、埼玉県農業技術研究センターの大岡直人 担当部長は「数多い中から残った1株なので『奇跡の1株』と呼ばれている」と話します。

2007年、猛暑の影響で約300株がほぼ全滅したなか、1株だけ猛暑に耐え抜いた品種が「彩のきずな」でした。これは奇跡といっても過言ではないのではないでしょうか。

コメは田んぼの水を吸って、葉っぱから水蒸気を放出して温度を調整します。彩のきずなは他の品種よりも水蒸気の量が多いので、気化熱で温度を下げる効果があるそうです。