米国が最後に維持している最上位格付けを失う場合、その3カ月以内にも米国債の保有を削減する暫定的な計画を香港の年金基金の運用者が策定した。事情に詳しい関係者が明らかにした。

関係者によれば、香港投資ファンド協会(HKIFA)や香港信託人公会などの業界団体が、この案について11日に年金規制当局と協議したという。非公開の会議だとして、関係者は匿名を要請した。

現行の規定では、香港の強制積立年金制度(MPF)で運用される総額1兆3000億香港ドル(約24兆円)の10%以上を米国債に投資できるのは、米国が格付機関からAAAまたは同等の格付けを受けている場合に限られる。

ムーディーズ・レーティングスが米国の格付けを5月に引き下げたため、最上位の格付けを維持しているのは日本の格付投資情報センター(R&I)のみとなった。R&Iは現時点で米国の格下げを検討していないとしているが、香港強制積立年金制度管理局(MPFA)は同月、年金基金運用者に対して格下げに備えた「緊急時対応計画」の策定を促した。

また、関係者によれば、MPF世界国債指数を運営するロンドン証券取引所(LSE)グループのFTSEラッセルは、香港の業界団体の依頼を受けて米国債売却計画の分析を行った。同指数は香港の年金基金運用者が米国債へのエクスポージャーの参考として広く利用している。

香港信託人公会の劉嘉時主席は11日に会合があったことを認め、生じ得る影響とその分析に関する資料を当局に提出したと説明した。

MPFAとFTSEラッセルの代表はコメントを控えた。香港投資ファンド協会はコメントの要請に応じなかった。

世界の投資家の大半は、米国債への投資にあたり最上位の格付けを要件としておらず、強制売りのリスクは最小限に抑えられている。だが、香港当局が年金運用者に課している規則は、特段厳しい。

米国債の規模と流動性を考慮すれば、香港の強制売りが世界の市場を大きく揺るがす公算は小さい。それでも投資戦略の見直しが必要になるポートフォリオマネジャーにとっては頭痛の種になる。米国に匹敵する大規模な発行体はなく、国債のみに投資するファンドにとって選択肢は限られる。

国・地域別の米国資産保有割合。JPモルガン・チェースが5月14日に発表した資料より

香港の年金基金運用者が策定した計画に基づくと、R&Iが格下げする場合、MPF世界国債指数における米国債の比重は大きく低下する必要がある。現時点で米国債は46.37%で最大の比重を占め、中国、フランス、日本、ドイツと続く。市場の変動を抑えつつ、10%の制限違反を避けるため、米国債への投資比率は9%程度とする必要があるだろうと、関係者は述べた。

関係者によると、年金基金の運用者はR&Iによる米国債格下げがあった後、3-6カ月でポジションの調整を行うことを提案。最上位格付けを持ち、市場規模の大きい他の国債に資金が振り向けられるだろうと、関係者は付け加えた。同指数に入っていて大手格付け会社がAAAとしている国債には、ドイツやシンガポールなどがある。

原題:Hong Kong Funds Plan to Cut Treasuries If US Loses AAA Score (1)(抜粋)

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