日本経済は1-3月期に失速し、4四半期ぶりのマイナス成長に転じた。輸入の反動増が重しとなり外需の弱さが目立った上、個人消費も低調だった。金融政策の正常化を進める日本銀行にとって、難しいかじ取りが求められる局面が続く。

内閣府が16日発表した実質国内総生産(GDP)速報値は前期比年率0.7%減、前期比では0.2%減だった。市場予想はそれぞれ0.3%減、0.1%減だった。過半を占める個人消費は前期比0.0%増。輸出は0.6%減と4期ぶりの減少で、輸出から輸入(2.9%増)を差し引いた外需寄与度はマイナス0.8%と2期ぶりのマイナスだった。設備投資は1.4%増と4期連続で増加した。

力強さを欠く日本経済に対し、米国の関税発動後はさらなる下押し圧力がかかる恐れがある。今期の業績予想の下方修正が相次ぐ中、雇用や所得が悪化すれば消費活動は萎縮し、企業の投資行動も慎重になりかねない。米関税の影響を踏まえて成長率見通しを引き下げた日銀は、利上げで緩和度合いを調整する方針を堅持しているが、政策判断は一段と難しさが増す可能性がある。

住友生命保険の武藤弘明エコノミストは、物価高の影響による実質賃金の伸び悩みが消費の弱さの原因になっていると指摘。これに米関税の悪影響が加わり、「当面日銀は利上げどころではないという結論になる」と語った。外需については、輸入は前期の反動による「一時的なかく乱要因」とし、需要の強さから戻ったわけではないとの見方を示した。

 

日銀は1日に公表した経済・物価情勢の展望(展望リポート)で、2025年度の実質GDP成長率見通しを0.5%(前回1月時点1.1%)、26年度は0.7%(同1.0%)に引き下げた。植田和男総裁は、各国の通商政策や海外経済を巡る不確実性は極めて高く、見通しが大きく変化し得る点には注意が必要だとしている。

米国の関税措置を巡り、日本政府は自動車や鉄鋼、アルミニウムにかかる25%の関税に加え、輸入品に一律10%の税率が乗せられている一連の措置の見直しを求めている。可能な限り早期の合意を目指しているが、石破茂首相は自動車関税対象外の日米合意は「のめない」との立場だ。

国内自動車大手の業績見通しは悪化している。トヨタ自動車は関税の影響で4-5月の2カ月間だけで1800億円の損失が出るとの見通しを示した。ホンダは26年3月期の営業利益が4500億円押し下げられるとみている。日産自動車に関しては、経営再建の努力が頓挫する恐れがある。同社は26年3月期における関税の影響額を最大4500億円と見込む。

住友生命の武藤氏は、米国の状況が落ち着かなければ、参院選を控えていることもあり、少なくとも日銀は夏場に利上げをするのは難しいと指摘。状況が落ち着けば、秋口から年末にかけて1回できるかどうかだろうとみている。

下振れリスク

赤沢亮正経済財政政策担当相はGDP発表後の談話で、1-3月に米国の関税措置による「特段の影響は見られなかった」と説明した。一方、米関税通商政策による「景気の下振れリスクに十分留意する必要がある」と指摘。物価上昇の継続が消費者マインドの下振れなどを通じて個人消費に及ぼす影響などもリスクとみている。

政府・与党は参院選を見据えて新たな経済政策の検討を進めているが、支持率が低迷する石破政権にとってマイナス成長は痛手となりかねない。ANNが10、11日に実施した世論調査によれば、内閣支持率は前月から3.8ポイント低下の27.6%と、政権発足以降の最低を更新した。不支持率は48.7%だった。

政府は29年度までの5年間で実質賃金を年1%程度上昇させる目標を設定した。物価高の影響で賃金上昇を実感しにくい状況が続く中、「賃上げこそ成長戦略の要」と位置付け、価格転嫁や取引の適正化、中小企業・小規模事業者の生産性向上など、賃上げ環境の整備に政策資源を総動員する。

内閣府が1日発表した4月の消費動向調査では、「暮らし向き」や「収入の増え方」など4項目全てが低下。基調判断では、消費者マインドは「弱含んでいる」に下方修正された。コメを含む食料や生活必需品の価格上昇で消費者物価指数(生鮮食品除くコアCPI)の前年比上昇率は4月まで4カ月連続で3%台で推移し、家計の警戒感は強まっている。

持続的な賃上げ実現に向けて政労使が取り組む中、名目賃金は今年3月まで39カ月連続プラスと所得環境は改善している。もっとも、物価高の影響から実質賃金の前年比は24年まで3年連続減少。今年も3月までマイナス圏で推移し、賃金上昇を実感しにくい状況が続いている。

他のポイント

  • 個人消費は食料品や電気代などが減少、外食やゲームおよび玩具は増加
  • 設備投資は研究開発やソフトウエアへの支出が増加
  • 輸出はロイヤルティー収入などの知的財産権使用料が減少、前期に大型案件で増加した研究開発サービスは反動減
    • サービス輸出が減少した一方、自動車など財貨の輸出は増加
  • 輸入は航空機や広告サービスが増加に寄与
  • 24年度名目GDPは617兆円、年度として初の600兆円超え

(エコノミストコメントや大臣談話を追加して更新しました)

--取材協力:氏兼敬子.

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