トランプ米大統領は13日、サウジアラビアの首都リヤドで演説し、貿易や投資で協力する限り米国は内政に干渉しないという明確なメッセージを発信した。

中東歴訪中のトランプ氏はサウジの近代化を進める同国指導者を称賛。イランやレバノン、シリアにも、より明るい未来を切り開く機会があると述べ、中東は「混乱ではなく、商業を特徴」にすることになるだろうと語った。

トランプ氏は「MAGA(米国を再び偉大に)」支持層の多くの意向に沿って、過去の米大統領が行ってきた国家建設の押しつけや人権問題を巡る圧力行使を否定した。サウジのムハンマド・ビン・サルマン皇太子については、「彼のことが大好きだ。好き過ぎるほどだ」と述べた。

トランプ氏は政権1期目からこうした外交方針を示していたが、2016年の選挙戦でイラクやアフガニスタンの「終わりなき戦争」を終結させると表明して以来、13日の演説は最も明確にそのビジョンを打ち出したものとなった。

トランプ氏は、国家建設を掲げて他国に干渉してきたとして歴代の米大統領を批判。「建設した国よりも破壊した国の方が多い。介入主義者たちは、自ら理解もしていない複雑な社会に干渉してきた」と述べ、「近年、外国の指導者の善悪を見極めようとし、米国の政策を用いて彼らの罪に裁きを下すべきだという考えにあまりにも多くの米大統領が取りつかれた」と指摘した。

リヤドのアル・ヤマーマ宮殿で会談するトランプ米大統領(中央左)とサウジのムハンマド皇太子(中央右)

この発言は、歴代の米大統領が警戒してきた指導者や政治勢力と関係を深めることをためらわないトランプ氏の姿勢と合致する。中米エルサルバドルのブケレ大統領が一例だ。

今回の演説は、従来の米外交と一線を画すトランプ氏の姿勢を浮き彫りにした。トランプ政権はサウジやイラン、シリアなどの人権問題を不問に付す一方で、ドイツの極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」への対応を巡り長年の同盟国である同国を批判するなどしている。

オバマ元政権で国家安全保障会議(NSC)高官を務め、現在は非営利組織、国際危機グループ(ICG)の政策責任者、スティーブン・ポンパー氏は「トランプ大統領が過去の大統領と決定的に違うのは、こうした理想を決して口にしない点だ」と述べ、「完全に退けている」と説明した。

トランプ氏の一連の発言は、ビジネスと投資で米国に協力するなら過去の行いは問わないとの明確なメッセージを中東諸国に送っていることを意味する。ホワイトハウスは13日、サウジから6000億ドル(約88兆2200億円)規模の投資の約束を得たと発表した。

トランプ氏は「たとえ深い溝があったとしても、私はより良く安定した世界のために過去の争いを終わらせ、新たなパートナーシップを築く用意がある」と語った。

原題:Trump Puts Dealmaking Over Rights in Saudi Arabia Policy Speech(抜粋)

--取材協力:Ryan Chua.

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