クリスティン・ハーマンさん(37)は、パートナーと一緒にパリとローマを巡る欧州旅行を計画していた。だが突如として米経済の先行きが不透明になったことから、行き先をオレゴン州のレッドウッドの森とキャノンビーチに変更した。ホテル代を節約するため、何泊かはキャンプもした。

アカデマイズド・ドット・コムで教育専門家として働くポートランド在住のハーマンさんは、「特に食料品と家賃がずっと値上がりしている」ことから、「今はそこまでお金を使う状況ではないと感じた」と語った。

トランプ大統領が仕掛けた世界的な貿易戦争が消費者信頼感を揺るがし、インフレ再燃のリスクを高める中、米旅行者の間では飛行機よりも車での移動を選ぶ傾向が強まっている。米自動車協会(AAA)によると、今年のメモリアルデーの週末には約3940万人が車で移動する見込み。これは前年より3.1%多く、過去20年で最多となる。一方、飛行機で移動する予定の人は約361万人で、前年比1.7%の増加にとどまる。

また原油が4年ぶり安値付近に値下がりし、ガソリン価格が低下している状況もドライブ旅行の魅力を高めている。AAAのデータによると、11日の全米のガソリン平均小売価格は1ガロン=約3.14ドルで、1年前より50セント近く安い。米エネルギー情報局(EIA)はガソリン価格について、4-6月(第2四半期)と7-9月(第3四半期)もほぼ同様の水準で推移すると予想している。

 

一方でAAAによると、今年のメモリアルデーの週末における国内線の航空運賃は前年の同時期と比べて2%上昇しており、往復航空券の平均価格は850ドル(約12万6000円)だ。格安航空会社が高級化を進め、運賃を引き上げていることも背景にある。このほか、最近相次いでいる航空関連のトラブルで安全性を巡る懸念も高まっており、それも航空機での旅行をためらわせる一因となっている。

最近のトラブルを受けて航空機での旅行に対する懸念が広がっている

旅行テクノロジー会社ヒストリーのデータによれば、価格要因のほか、株式相場で最近見られるボラティリティーも影響し、旅行者の68%近くがバケーションの計画を変更。変更内容は、ドル軟化への対応として前払いに切り替えた例や、旅行自体をキャンセルしたケースまで多岐にわたる。

バケーションレンタル向け収益管理会社ビヨンドのジュリー・ブリンクマン最高経営責任者(CEO)にとって、こうした急速な旅行計画変更は、新型コロナウイルス感染の流行に伴い2020年3月に実施された飛行制限やロックダウンの状況を想起させるものだ。ブリンクマン氏によれば、旅行者の間では国外よりもメキシコ湾岸やゴールドコースト、グレート・スモーキー山脈といった国内各地を選ぶ傾向が強まっているという。

「人々はなお旅行を望んでいるが、目的地は自宅により近い場所になるかもしれない」とブリンクマン氏。「予約のタイミングも遅くなっている。自らの雇用が安定しており、旅行資金を準備できるという確信を得たいのだ」と述べた。

原題:Americans Hit the Road as Economic Fears Discourage Flying (1)(抜粋)

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