(ブルームバーグ):ニューヨーク市の超高層ビル「ワン・ワールドトレードセンター」は、開業以来初となる最上階部分のオフィス賃貸を始める。地上約1100フィート(約355メートル)と西半球で最も高い場所にある賃貸オフィスで、ロウアーマンハッタンの長きにわたる復興の象徴的な節目となる。
約10年前に開業した同ビルは今回、89階と90階のテナントを入札形式で募集。開発に携わったダースト・オーガニゼーションは、1平方フィート当たり最大160ドル(約2万4000円)の賃料を見込んでいる。これはロウアーマンハッタンでは異例の高さであり、過去10年間に多くの金融機関が移転したミッドタウンの一等地並みの水準。そうした企業の一部を今回の賃貸で呼び戻せると同社は期待している。
同社幹部のエリック・エンゲルハート氏は新たなテナントについて、「金融関連の企業になる可能性が高い」とした上で、「当ビル内に多く入居しているテクノロジー企業に投資するベンチャーキャピタルになるかもしれない」と語った。
「ワン・ワールドトレードセンター」には現在、出版社のアドバンス・マガジン・パブリッシャーズや、発電・再生可能エネルギー分野に注力する投資会社エナジー・キャピタル・パートナーズなどが入居している。
これは、かつてのワールド・トレードセンターのテナント構成とは大きく異なる。以前は保険会社や証券会社、大手銀行がフロアを占めていた。そうした企業は今、ワールド・トレードセンター跡地から数キロ離れたグランド・セントラル駅やハドソンヤード周辺の高層ビル群に拠点を構えている。
ニューヨーク市のオフィス不動産市場では、空室率は新型コロナ禍前の水準をなお上回っているが、過去数カ月では一部で需要が急回復している。企業が社員のオフィス復帰を促すため、設備の整った高級ビルへの入居を進めているためだ。マンハッタン全体では、1-4月のオフィス賃貸契約件数は前年同期比で46%増加した。
CBREグループのハワード・フィドル氏は「現在のミッドタウンは空きが少なく、賃料も非常に高いため、一部の企業は再びダウンタウンへの移転を検討せざるを得なくなっている」と指摘。「今後1年以内に、誰もが知るような大手企業が南へ移転するだろう」と語り、「1社が動けば次々と続くはずだ」と続けた。
商品投資に特化した代替資産運用会社、オニキスポイント・グローバル・マネジメントの創業者シャイア・ホセインザデ氏は、2017年にミッドタウンから移転して以来、ワン・ワールドトレードセンターの45階にオフィスを構えている。このビルは同氏にとって、ニューヨークの粘り強さの象徴だという。
「2001年9月11日の同時多発テロからの10年間、そこにはただ巨大な穴が広がっていて、私たちニューヨーカーにはとてもつらい時間だった。このビルは復興の力強さを物語っている」と語った。
原題:NYC’s Tallest Tower Leases Its Highest Floors for the First Time(抜粋)
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