インターネット取引口座で顧客のIDやパスワードが盗まれて不正取引が行われた問題で日本証券業協会は2日、損失を被った顧客に対して一定の補償を行う方針を証券会社10社と申し合わせたと発表した。

補償する方針を決めたのは野村証券、大和証券、SMBC日興証券、みずほ証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、SBI証券、楽天証券、マネックス証券、松井証券、三菱UFJeスマート証券。

日証協と大手10社が口座乗っ取りによる被害の補償方針を示すことで、顧客の間で広がるネット取引への不安を解消する狙いがある。金融商品取引法では顧客への損失補填が禁止されていることから、今回の被害に対して補償が受けられないのではとの懸念も出ていた。

日証協の発表によると、各社の約款などの定めにかかわらず、一定の被害補償を行う方針。被害状況を十分に精査し、顧客のIDやパスワードなどの管理状況、証券会社における不正アクセスを防ぐための注意喚起を含む対策などを勘案した上で、個別の事情に応じて対応する。

日証協の松尾元信専務理事は「大規模な証券口座への不正取引は極めて深刻な状況」とした上で、約款の定めにかかわらず一定の被害補償を行うことは「かなり異例」の対応だと述べた。今回申し合わせた10社以外にも損失補償への対応を依頼していくという。

口座乗っ取りを巡っては、楽天証で3月下旬に判明して以降、これまでに対面・ネット大手の計9社で被害が確認されている。

被害に遭った顧客への補償に関して日証協の森田敏夫会長は先月の会見で「基本的には各社が判断する」としながらも、「一律に補償しないということはあり得ない」と述べていた。加藤勝信金融相も先月の会見で「各社に対して被害の回復に向け誠実な対応、協議を指示した」としていた。

金融庁によると、2月から4月16日までの約3カ月間で、口座乗っ取りによる不正取引は計1454件、売買金額は954億円に上る。

日証協は4月下旬に、不正取引の防止対策として2つ以上の要素で本人確認を行う「多要素認証」の設定必須化を決めた証券会社58社の社名を発表した。5月2日時点では69社まで拡大したことも公表した。

 

(日証協幹部のコメントなどを追加して記事を更新します)

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