(ブルームバーグ):米国訪問中の赤沢亮正経済再生相は現地時間1日(日本時間2日)、米政府による関税措置に関する2度目の閣僚協議を終えた。赤沢氏は貿易拡大などで具体的な議論を行ったとしたが、詳細は明らかにしなかった。次回協議は5月中旬以降で調整する。
ワシントンでベッセント米財務長官らとの交渉後、現地の日本大使館で記者団に語った。赤沢氏は「率直かつ建設的な議論を行い前進することができた」とした上で、両国間の貿易の拡大、非関税措置、経済安保面での協力などについて具体的に議論をしたと説明した。具体的な進捗(しんちょく)状況などは「全て合意して初めて合意となる」とし、詳細は明らかにしなかった。
6月に首脳間で合意に至る可能性について問われ、「そういう段階に入ればいいと思っている」とも述べた。今回の協議は約2時間10分に及んだ。赤沢氏は、米国による関税措置は極めて遺憾との認識を改めて伝え、見直しを強く申し入れたという。
日本経済新聞は2日、米国側がこの日の交渉に合わせて合意に向けた「枠組み案」を提示したと報じた。相互関税を主な対象とし、自動車や鉄鋼・アルミニウムの関税引き下げに難色を示す内容だったという。
日本側が米関税措置の完全撤廃を目指す対米交渉は、内閣支持率が低迷する石破政権の浮沈を握る可能性がある。夏に参院選が控える中、交渉の妥結に向けた道筋を付けることができれば有権者に成果を訴えることができる。一方で交渉の行方次第では、政権基盤がいっそう揺らぐ事態も想定される。6月はカナダで主要7カ国(G7)首脳会議が開かれる。
石破茂首相は協議終了後の2日午前、日米で突っ込んだ議論が行われたものの、一致点を見いだせる状況には至っていないと報告を受けたことを明らかにした。妥結を目指す時期については「早くにこしたことはないが、中身が早いことを優先するあまりに国益を損なうものであってはならない」と強調した。官邸で記者団に語った。

ベッセント氏は先月29日、日本や大統領選が6月にある韓国などの交渉姿勢について「選挙に入る前に貿易協定の枠組みを完成させ、米国との交渉に成功したことを示したいと考えている」との見方を示していた。
選挙日程との関連について問われた赤沢氏は、「お互い政治家同士の話なので政治日程は頭に入っていると思うが、そういうものを切り離して国益を守り抜かねばならない」と応じた。
為替や安全保障については議論にならなかった。為替は加藤勝信財務相とベッセント氏との間で協議することが決まっている。先月25日に行われた日米財務相会談では、米国側から為替相場の水準や目標についての言及はなかったという。安保に関しても赤沢氏は、関税や貿易と一緒に議論するのは「無理があるように思う」と述べた。
一方で、加藤財務相は関税交渉が行われていた2日早朝、テレビ東京の報道番組に出演。今後の関税交渉の中で米国債を安易に売らないと明言することは日本の手段の一つになり得るかどうかを問われ、「カードとしてはあると思う。それを切るのか切らないのか、というのはまた別の判断だ」と述べた。日本政府による保有は「米国を支援するために持っているわけではない」とも発言した。
自動車部品も見直しを
日本に対する米国の関税措置は自動車や鉄鋼、アルミニウムへの25%に加え、これとは別に輸入品には一律10%の税率が課されている。5月3日からは自動車部品への関税発動も予定されている。
自動車を巡る協議は日米交渉における重点事項の一つだ。貿易統計によると、2024年度の米国向け輸出のうち自動車と自動車部品は計約7兆4000億円と、対米輸出全体の3分の1強を占める。
赤沢氏は、自動車部品への関税について「予定通り発動することは見直してほしいということを申し上げた」と語った。
トランプ米大統領は先月29日、自動車業界への関税負担を軽減する大統領令に署名した。別の布告によると自動車部品への25%の関税についても変更が加えられた。
農業分野への国内の関心も高い。コメについては、供給不足による価格高騰を背景に米国からの輸入を増やす案は日本にとっても応じやすい側面があるが、国内の農家への影響に対する懸念も根強い。自民党からは、大豆やトウモロコシの輸入拡大については容認する声が出ている。石破首相は、自動車を守るために農業を犠牲にすることはないとの考えだ。
米商務省の調べでは、日本から米国への投資額は2023年に7833億ドル(約111兆7000億円)と、国別の対米投資では最大となった。
(日本経済新聞の報道と加藤勝信財務相の発言を追加して更新します)
--取材協力:関根裕之、氏兼敬子.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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