(ブルームバーグ):資産家イーロン・マスク氏は連邦準備制度理事会(FRB)に「政府効率化省(DOGE)」のチームを送り込むことを検討している。首都ワシントンのFRB本部ビルの改修計画を、無駄な政府支出の例としてやり玉に挙げている。
「結局のところ、これは納税者の金だ。FRBが25億ドル(約3600億円)を内装に使っているのか、厳正に検証しなくてはならない」とマスク氏は4月30日、ホワイトハウスで記者団に述べた。FRBは建設資材と人件費の高騰を費用増の原因と説明している。
「驚きの額だ」とマスク氏は語った。
マスク氏がホワイトハウスで発言した数時間後、米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)はテスラ取締役会が次期最高経営責任者(CEO)候補を探すために、人材紹介会社との協議を開始したと報じた。同社取締役会長は事実に反するとして、報道内容を否定した。
FRBは議会が割り当てる予算に依存しない。運営の財源はバランスシートに保有する証券による収入で賄う。しかし近年は金利コストの上昇で収支は赤字に陥っており、これがマスク氏の目を引いた。
DOGEは1月の新設以来、連邦政府の各省庁にチームを送り込み、無駄や不正の摘発、職員削減を進めるとともに、機密性の高いデータにアクセスしてきた。ワシントンのFRB本部や地区連銀12行には、管轄下の銀行に関する機密情報や金融政策討議に関連した非公開の記録が保管されている。
社会保障庁
DOGEはすでに社会保障庁のシステム障害を引き起こしたと批判されており、ずさんなセキュリティーやデータ乱用の問題が指摘されている。連邦高裁は4月30日、社会保障庁に保管されている個人データへのアクセスをDOGEに禁じた下級裁の判断を支持。社会保障制度を「ネズミ講」と呼んだマスク氏の発言を判断材料の一つとした。
こうした批判に対し、マスク氏はDOGEは年間1620億ドルの不正受給を排除するためにこうしたデータは必要だと主張。各省庁間でデータベースが共有されていないことが不正の温床になっていると主張している。
マスク氏が打ち出した「フォーク・イン・ザ・ロード」イニシアチブにより、2月末までに退職した政府職員は9月末まで給与が保証されている。第一次退職希望者8万人のうち、4月末までに退職したのは4分の3。各省庁は業務に支障が出ないよう、退職する職員を異なるタイミングで求職扱いにしている。
マスク氏の側近、アンソニー・アームストロング氏は最終的に退職する連邦政府職員数について、情報関連省庁が含まれるために開示されない可能性が高いが「数十万人」規模になるだろうと述べた。退職者の約80%が自発的退職になる見込みだという。
原題:Musk Says DOGE ‘Should Definitely’ Examine Federal Reserve Costs(抜粋)
--取材協力:Christopher Condon、Kate Davidson.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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