世界の軍事費は増加率・金額ともに冷戦後最大に
2025年4月28日、SIPRI(ストックホルム国際平和研究所)は2024年のデータを含む“Military Expenditure Database”の最新版を公表した。2024年の世界の軍事費は、増加率・金額ともに冷戦後最大を記録した。2024年は実質で9.4%の増加、金額も名目で2兆7,182億ドルとなった。ロシアによるウクライナ侵略や中東の不安定化などを契機に世界各地で地政学的緊張が高まっており、各国が安全保障への備えを強化している。
世界シェア:米国が圧倒的トップの 36.7%、ヤルタ 2.0 を連想させる米中露で 53.7%
国別の世界シェアをみてみる。米国が全体の36.7%を占めており、圧倒的なトップの地位を維持している。続く中国、ロシアを加えた米中露 3 か国で 53.7%に達しており、4位以下のシェア2-3%台の集団を引き離している。ヤルタ2.0なるキーワードがささやかれるなか、数字だけみれば協調して「力の支配」を規定する誘惑に駆られてもおかしくない3か国ともいえよう。これまでは、米国が「法の支配」の維持に力を投じてきたことで、東西冷戦時代から長きにわたりパワー・バランスが保たれてきた。バランサーとして極めて存在感が大きかった米国のリーダーが、ロシアと融和し「力の支配」の誘惑に傾倒しつつあることの持つ意味は極めて大きい。これまで米国は、冷戦期から 2000 年代にいたるまで、ソ連・日本といった競争相手、すなわち軍事力や経済力の「2位」に打ち勝ってきたが、現在はいずれも「2位」の中国との競争に勝てるのかが問われている。そのようななかで、米中間で何等かのディールが成立して、力の支配の世界をともに推し進める協力国になってしまう可能性があるのだろうか。現状、米中は敵対関係・競争関係にあるが、今後を占う上では米中のリーダー間の関係性がどう変化していくのか、特に注視していく必要がある。