ドルは4月に2022年以来の大幅下落を記録した。世界中の投資家が米国資産の保有を減らしたことが背景。オプション市場ではさらなるドル安の兆候がうかがわれる。

ブルームバーグ・ドル・スポット指数は4月に4%近く下落。トランプ米大統領による混乱に満ちた関税措置で世界の市場に動揺が広がり、米国の株式と国債が売られた結果だ。

オプション市場の動向を見ると、来年にかけてのドルを巡るセンチメントは20年以来最もネガティブとなっており、一段のドル安へのプロテクションに対し強い需要がある。

米関税措置のこうした影響を受け、世界の準備通貨であるドルが引き続き資金の安全な逃避先であるかどうか、投資家の間に疑念が浮上している。複数の銀行のモデルでは、企業や資産運営会社からエクスポージャー調整のため月末のドル買いの可能性が示唆されていた。だが、今週ドル安が進んだことでこうした疑念は深まることになった。

カルミニャックの投資委員会メンバー、ケビン・トゼ氏は「4月の相場動向は『通常のレバレッジ解消』というよりも、『米国からの内外リアルマネーの静かな流出』といった様相が色濃い」との見解を示した。

4月の混乱は、ドル資産にあまりにも多くの資金を投入することのリスクを浮き彫りにした。月末は通常、資産運営会社がパフォーマンスに基づいて資産の精査・調整を行い、輸出企業ではエクスポージャーを管理し、1日当たり7兆5000億ドル(約1073兆円)規模の外国為替市場で大規模な資金フローが生じる時期だ。

今回の場合、米国資産の不振を受けて資産運営会社や輸出企業はドル買いに動くと見込まれていた。バークレイズやクレディ・アグリコルのモデルでもドル買いの可能性が事前に示唆されていた。

市場参加者によれば、28日の資金フローはポジティブなものだったものの、ドルは0.5%安となり、今週は週間ベースでも下落の方向にある。これは月末のドル買いをドル売りが上回ったことを示唆しており、市場の行動がシフトした可能性がうかがわれる。

インベスコ・アセット・マネジメントのグローバル市場ストラテジスト、デービッド・チャオ氏は「一段と広範にわたる構造的な力が作用していると考えられ、長期の投資家は特に『米国例外主義の終わり』を目にしているのか、全般的な『脱ドル化』のテーマであるのか特に意識すべきだ」と語った。

トランプ政権の通商政策の影響は米商務省が30日に発表した1-3月(第1四半期)の実質GDP(国内総生産)でも顕在化した。関税発動前の記録的な輸入急増で純輸出が落ち込み、22年以来のマイナス成長となったことで、米国例外主義はさらに揺らいだ。

マニュライフ・インベストメント・マネジメントのシニアポートフォリオマネジャー、ネイサン・スフト氏は「ほんの数週間前に比べても関税について多くの事項が明らかになったが、引き続き高度の不確実性があり、こうした不確実性がハードデータに表面化し始めたばかりだ」と論評した。

原題:Biggest Dollar Slump Since 2022 Hints at More Losses Ahead (1)(抜粋)

--取材協力:Anya Andrianova.

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