(ブルームバーグ):米トランプ政権による関税政策が世界の金融市場を揺さぶる中、日本の新興市場銘柄が堅調だ。関税の影響を受けづらい内需型企業が多い上、東京証券取引所による市場改革案も明らかになるなど好条件がそろいつつある。
東証グロース市場250指数(旧マザーズ指数)はトランプ米大統領が2日に上乗せ関税を発表して以降に0.8%安と、東証株価指数(TOPIX)の5.7%安をアウトパフォームしている。グロース市場指数は主に国内で事業展開する企業で構成され、世界経済の先行きが不透明な中で投資資金の逃避先になった。
24年は金利上昇懸念が財務基盤の弱い新興市場の中小型グロース銘柄には逆風となり、指数は過去最長の4年連続安を記録した。一方で現在は米関税政策による影響の見極めに時間がかかるとして日本銀行の利上げ観測が後退しており、投資対象として見直されやすくなっている。
MCPアセット・マネジメントの大塚理恵子ストラテジストは米国の関税政策が完全に撤回される可能性は低いことから、投資家は「内需を中心とする中小型が今後1年くらいアウトパフォームしやすい」と考えていると話す。過去数年に中小型株やグロース株のパフォーマンスが振るわなかったことも割安感による買いやすさにつながっていると指摘した。
実際に国内小型株の主な買い手である個人投資家は、相場の下落局面で逆張りの買いを入れている。配当などの需給要因もあり、東証によると4月第1週の現物と先物を合わせた買越額は7264億円と、12週ぶりの大きさとなった。
一方、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の大西耕平上席投資戦略研究員は、グロース市場銘柄の好パフォーマンスは一時的にとどまる可能性があるとみている。現時点で「海外投資家の買い対象になるような規模感の銘柄がない」ためだ。
グロース市場では上場後の成長力が鈍い銘柄が多く、株式流動性の低さがかねて課題とされてきた。この点に関連し、東証は上場維持基準の厳格化に動き出している。上場から5年が経過した企業が時価総額100億円未満の場合に上場廃止にする改正案を2日示した。決定事項ではないものの、30年以降に適用される見通しだ。
アイザワ証券投資顧問部の三井郁男ファンドマネジャーは、「投資家のスクリーニングにかからない会社があまりにも多くなってしまい、その中で交通整理は当然必要」と東証の取り組みを歓迎する。「企業は上場がゴールではないことを示さなければならず、市場全体にプラスになり得るとの期待感がある」との見方を示した。
もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
©2025 Bloomberg L.P.