(ブルームバーグ):14日の日本市場は超長期債が大幅下落。15日の20年国債入札や財政拡張に対する警戒感から売りが膨らみ、20年債と30年債利回りは21年ぶりの高水準を付けた。
株式は上昇。米国のトランプ政権がスマートフォンなどの電子機器を上乗せ関税の対象から除外したことを好感し、半導体や電機株などが買われた。一方、円相場は米関税政策への警戒感から1ドル=142円台まで円高・ドル安が進行した。
明治安田アセットマネジメント債券運用部の大﨑秀一シニア・ポートフォリオ・マネジャーは、超長期債は地合いが悪い要因もあるが買い手がいないため、売りが出て利回りは大きく水準を切り上げたと指摘。「あすの20年債入札に対する警戒感が相当あることの証左だろう」と述べた。
債券
債券相場は超長期債が下落。8日の30年国債入札の不調で超長期ゾーンの需給が悪化しており、同じ超長期ゾーンの20年債入札に対する警戒感が強まった。
米国の関税措置の日本経済への影響が懸念される中、歳出拡大への警戒感も強まった。流動性が低い超長期債は午後に金利が跳ね上がり、新発20年債利回りは一時2.44%に上昇。新発30年債利回りは同3時過ぎに取引が成立し一時12bp高い2.845%と、ともに2004年以来の高水準を付けた。
BNPパリバ証券の井川雄亮マーケットストラテジストは、生命保険会社などの買い手が不在の中、超長期を支えていた年金基金も株価回復や円安がなければ売り手になる可能性が高いとし、「新たな投資家が魅力的と思う水準までの調整が必要」と指摘した。
一方、先物や中長期債はリスク回避の動きで堅調となった。
三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジストは「トランプ氏が新たな関税策を出すとの報道を受けて為替が1ドル=142円台に振れ、債券も底堅くなった」と指摘した。
新発国債利回り(午後3時時点)
株式
東京株式相場は上昇。アドバンテストや東京エレクトロンなどの半導体や電機、機械株のほか、銀行や素材などの景気敏感株が買われた。関税緩和への期待から医薬品株も軒並み上昇した。
TDKやアルプスアルパイン、太陽誘電など米アップル関連銘柄が上昇。英ペラム・スミザーズ・アソシエイツのアナリスト、ペラム・スミザーズ氏は、上乗せ関税からの除外は週明けの株式市場にとってポジティブな材料であり、アップルのサプライチェーン関連銘柄にとって朗報だとメモに記した。
インベスコ・アセット・マネジメントの木下智夫グローバル・マーケット・ストラテジストは、関税が米経済に大きな問題をもたらす場合はトランプ大統領が「パッチワーク的に修正してくれるとの期待感」が市場に安堵(あんど)感をもたらしていると指摘。「市場全体として景気悪化に対する懸念がやや和らいだ」とも話した。
もっとも、木下氏は「きょうは一喜一憂の一喜のところがかなり強く相場に反映された」とし、実際にセクター別関税の発表があった際には影響が厳しいと市場の認識が変化する可能性があり、楽観は短期的なものとの見方を示した。
為替
東京外国為替市場の円相場は一時1ドル=142円台前半まで上昇し、先週末に付けた昨年9月以来の高値(142円07銭)に近づく場面があった。トランプ関税に対する懸念が根強く、ブルームバーグ・ドル指数は年初来安値を更新。赤沢亮正経済再生相が関税協議で米国側から為替に関する議論が提起された場合に応じる考えを示したことも、円安是正の思惑を通じて円買いを促した。
オーストラリア・ニュージーランド銀行外国為替・コモディティ営業部の町田広之ディレクターは「先週のドル売りの余韻が続いている」と指摘。日米関税協議を巡っては、足元で円高が進む中、日本銀行の利上げや為替介入は考えづらいとしながらも、「発言に対する警戒感から円が買われている面もあるかもしれない」と述べた。
赤沢経済再生担当相は16日から3日間の予定で米国を訪問し、日本時間の17日にベッセント財務長官、グリア米通商代表部(USTR)代表と初めての交渉に臨むとNHKが12日報じた。
米連邦準備制度理事会(FRB)の市場安定化に向けた介入の姿勢やトランプ政権が一部電子機器の上乗せ関税を除外したことなどを受けて投資家のリスク回避姿勢が和らぎ、円は早朝に一時144円31銭まで下落。ただ、トランプ氏は電子機器に対して引き続き関税を課すと改めて表明しており、米中貿易摩擦への根強い懸念が円相場を支えている。
ソニーフィナンシャルグループの森本淳太郎シニアアナリストは、関税政策を巡り「二転三転するトランプ大統領の発言は信じられず、ドル売り・円買いにつながっている」と指摘。今週の日米関税交渉については、「日本ができることは円高への誘導と米国からの輸入拡大ぐらいしかない」とし、物価上昇で苦しむ国民の理解を得られやすい円安是正については「日銀の利上げを促す」との見方を示した。
この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。
--取材協力:アリス・フレンチ、横山桃花、船曳三郎.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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