トランプ米大統領の気まぐれな政策を見極めようと投資家が苦慮する中で、ウォール街の銀行が発表した1-3月(第1四半期)のトレーディングは好調だった。しかし、業界のリーダーらは将来に対し明確な答えも楽観的な見通しもほとんど持っていない。

米大手銀行の決算シーズンが11日に始まり、米銀最大手JPモルガン・チェースなどが3行が業績を説明すると、「不確実性」や「未知数」、「混乱」といった言葉が何度も繰り返された。

JPモルガンのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は電話会議で、不透明で予測不可能なのは経済だけではないと述べた。欧米の経済的関係および軍事同盟が今後も維持されるのかという、より重要な疑問がある。

ダイモンCEOが語る

ダイモン氏はJPモルガンが貸倒引当金を9億7300万ドル(約1400億円)積み増したと報告。アナリスト予想より40%余りを多く、驚きが広がった。

同行は必要資本よりも多くの資本を保有しており、ダイモン氏は「どんな荒波にも耐えられるだけの流動性を十分に備えている」と語った。

トランプ氏が発表した無秩序な関税や政府機関の縮小・閉鎖は、貿易やインフレ、失業、それにリセッション(景気後退)の可能性を巡る懸念を強めた。銀行幹部によると、各企業はウォール街が関与する企業の合併・買収(M&A)を含め事業拡大を一時停止している。

「多くの人々が何もせず、様子を見ようとしている」とダイモン氏は言う。

 

ウォール街のベテランアナリスト、マイク・メイヨー氏がJPモルガンなどの国際的な米企業は貿易戦争に巻き込まれることを懸念すべきなのとダイモン氏に尋ねると、同氏は「われわれはその的に入るだろう」が「問題ない」と答えた。

JPモルガンのジェレミー・バーナム最高財務責任者(CFO)は「労働市場が引き続き非常に好調なら、消費者クレジットは恐らく良好だろう」と述べた上で、「そうでない場合は、これまでと同じように影響が表れる」と予想。

アナリストらは、トランプ氏が一部関税の停止を決めた要因とされる国債市場のボラティリティーについても質問。バーナム氏がもちろん注意深く見守っていると話すと、ダイモン氏は「一瞬一瞬」だと付け加えた。

モルガン・スタンレーのテッド・ピックCEOは、投資家が24時間常に経済の将来に対する評価を変えていることを株式・債券・為替市場が示しているとアナリストらに伝えた。

「われわれは過去3年間、歴史の終わりについて語ってきた。つまり、グローバル化に向けた政治・経済的調整の長い期間の終わりについてだ。今、歴史は再び始まる。そして、それに伴い、見通し予測が難しい調整期間が訪れる」と述べた。

原題:‘Stormy Seas’: Jamie Dimon Sums Up Banks’ Gloomy Global Outlook(抜粋)

--取材協力:Hannah Levitt、Yizhu Wang.

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