著名投資家ウォーレン・バフェット氏が率いる米投資・保険会社バークシャー・ハサウェイは11日、総額900億円の円建て社債の発行条件を決めた。トランプ米政権の関税政策を巡って市場が不安定化しており、同社の円債として過去最少となった。

バークシャーは年限3年から30年までの6本立てで起債した。発行総額は2019年の円債発行開始以来、初めて1000億円を下回った。日本の金利上昇を反映し、スプレッド(上乗せ金利)は全ての年限で24年10月の前回の円債を上回った。

起債はトランプ米大統領が関税引き上げをちらつかせ、世界的な貿易摩擦への懸念が世界中の金融市場を揺るがした時期と重なった。社債市場では全般的に資金調達コストが上昇し、世界経済の先行き不透明感が増すとの懸念から長期債への需要が鈍化。複数の日本企業が起債を取りやめた。

マニュライフ・インベストメント・マネジメントの押田俊輔クレジット調査部長は、一般論として「今のマーケット環境では発行体が許容できる最大のスプレッドを払ったとしても買えない人もいるのではないか」と話した。

 

調達資金がバークシャーによる日本企業への出資比率引き上げに充てられる可能性があることから、同社の起債に対する投資家の関心は高い。実際、バークシャーが日本の大手商社5社への出資比率を引き上げたことが3月に明らかになっている。バフェット氏は2月の株主に向けた書簡でその計画を示唆していた。

バフェット氏は書簡で、三菱商事や伊藤忠商事を含む5大商社に対する「称賛の念は一貫して高まっている」と記した。昨年は日本企業に対する同氏の熱意が日本株市場への海外からの資金流入を促し、日経平均株価と東証株価指数の過去最高値更新に貢献した。今年は米中の貿易摩擦が世界的な景気悪化につながるとの懸念から両指数ともこれまでに10%以上下落している。

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--取材協力:日向貴彦.

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