トランプ米大統領が上乗せ関税の停止措置を発表してから24時間を経ずして、再び米国の株式、国債、通貨が下落した。ウォール街は世界的なリセッション(景気後退)懸念に覆われている。

S&P500種株価指数は10日、3.5%安で取引終了。前日の大幅反発を受け、投資家が戻り売りに動いた。米長期国債も値下がりし、利回りは急上昇した。

ブルームバーグ・ドル・スポット指数は3日続落。スイス・フランなど安全と見なされる通貨に米資産から資金が移行した。原油価格も下げている。

トランプ氏が多数の貿易相手国・地域に関税を賦課する計画を発表して以降、市場は大きな変動に見舞われている。S&P500種指数の過去2日間の変動は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)時や2008年の金融危機時に匹敵する規模だ。

市場の動きは、厳しい現実を示す。トランプ氏の関税政策の混乱で米経済への信頼は急速に損なわれている。トレーダーが今後の展開を見極めようとする中、向こう3カ月間、市場の緊張状態が続く恐れがある。

スミード・キャピタル・マネジメントのビル・スミード最高投資責任者(CIO)は「この状態がすぐに終わり、幸せな日々にすぐに戻る現実的な見通しは極めて低い」と指摘。「これは大きな弱気相場の始まりだ」とコメントした。

トランプ政権2期目が始まり3カ月足らずで市場の心理は急変。ウォール街は当初、減税や規制緩和、経済成長促進を通じて強い株式相場が続くとみていた。

ところが、そうした期待は急速に縮小している。トランプ氏は数万人の職員解雇に動き連邦政府の支援を止め、自国に有利となるよう一方的に世界貿易のルールを書き換えようとしている。関税そのものと同様、発動を巡る二転三転などトランプ氏の進め方も懸念を深めている。

ボケ・キャピタル・パートナーズの創業者でCIOのキム・フォレスト氏は、新興国市場でもどのような政策が取られるかがある程度分かると指摘。「ここ米国では、もはや一部の最良の企業についてもファンダメンタル分析ができなくなっている」と話した。

貿易戦争は、サプライチェーンを断ち貿易を減らし、輸入品価格上昇を通じ米消費者に再びインフレの打撃をもたらす恐れがある。

リサーチ・アフィリエーツの株式戦略CIOクエ・グエン氏はトランプ氏について、「恐慌の瀬戸際に達するまでは後退しないだろう」と予測。「株式市場は合理的にリセッションを織り込んでいる」としている。

原題:Markets Plummet as Tariff-War Woes Fuel Exodus from US Assets(抜粋)

--取材協力:Ye Xie.

もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp

©2025 Bloomberg L.P.