投資パッケージ、軍備品購入

ディール実現に向けて、日本は如何なるパッケージを米国に提示して交渉するのか。2月に行われた米国での首脳会談、そして今回の電話会談などを踏まえ、パッケージの主要部分は対米投資のコミットメントになる可能性が高いと当社経済分析チームは考える。a)LNG 関連、b)自動車関連、c)AI 関連などを主力とする対米投資の実施である。更に、d)軍備品の購入なども検討される。

輸入関税引き下げ、非関税障壁の緩和

加えて、トランプ大統領が相互貿易公表の記者会見で示した日本に対する不満や3月31日にUSTRが公表した2025年の貿易障壁報告書(NTE)などを踏まえるとe)日本が米国製品に課している輸入関税の引き下げやf)自動車分野などの非関税障壁の緩和などもパッケージの一部として想定される。

一定の関税率引き下げ

日本国内の政治的なハードルは高いものの、最近の食料品価格の上昇なども踏まえれば、米国産農産物などを中心とした関税率の一定の引き下げは考えられる。NTEでは、日本の最恵国待遇(MFN)の適用平均関税率が3.7%にとどまるものの、農産品では12.2%に達すると指摘された。そして対米という観点では、コメ、乳製品、飲料、加工食品、魚介、皮革製品などが列挙されている。日本国内の産業に対する支援強化などとのパッケージにより、一定の関税率引き下げが講じられる可能性がある。

消費者にも恩恵がある格好の非関税障壁の軽減

NTEでは非関税障壁として、コメ流通、自動車安全基準認証、デジタル規制などが指摘された。日本の消費者の便益と安全、国内産業保護も両立する格好で、一定の非関税障壁を軽減することは考えられる。非関税障壁の軽減がどの程度の米国製品の輸入増加に繋がるかは別の問題であるが…。

ディールにより国難の軽減を目指す

正直なところ、対米交渉において日本に全く新たな隠し玉が有るとは考え難い。米国と日本が共に100%ウインウィンのディールも想定されない。しかし、一定のディールの実現により、「国難」を軽減することは可能と考える。

情報提供、記事執筆:SMBC日興証券 チーフマーケットエコノミスト 丸山義正

2025年4月8日発行レポートより転載