トランプ米大統領が2日(日本時間3日)発表した相互関税などを踏まえた日本銀行の金融政策運営について、想定よりも厳しい内容で日本経済に深刻な影響が及ぶ可能性があるとし、追加利上げの時期は先送りされるとの見方がエコノミストの間で広がっている。

農林中央金庫総合研究所の南武志主席研究員は、国内総生産(GDP)を0.5%程度かそれ以上押し下げる可能性があり、「日本経済に深刻な影響を及ぼし得る」と指摘。日銀が30日と5月1日に開く次回の金融政策決定会合までに関税の影響を見極めるのは困難とし、「5月利上げの可能性は低下した」と語った。

長い目でみた日本経済の成長力を映し出す潜在成長率は、日銀が3日に発表した昨年10-12月期の推計では0.66%。昨年の実質GDP成長率は0.1%とかろうじてプラス成長を4年連続で維持したが、米関税措置を受けた輸出減や企業行動の慎重化によって、日本の実体経済の下振れ懸念が強まる恐れがある。

SMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミストも、今後の日米交渉次第としながらも、日本経済への下押しは大きくなる公算が大きいとし、「5月の利上げは正直難しいだろう」と語った。メインシナリオは7月の利上げを維持しつつも、場合によっては秋まで遅れる可能性もあるとの見方を示した。

日銀の植田和男総裁

植田和男総裁は政策を維持した3月会合後の記者会見で、賃金・物価は想定通りとする一方、海外発の不確実性に懸念を表明した。2日には、米関税政策の範囲や規模次第では各国の貿易活動に大きな影響が及ぶ可能性を国会答弁で指摘。想定より厳しい措置を受けて政策正常化に向けてより難しい判断を迫られそうだ。

今回の相互関税では、米国への全輸出国に基本税率10%が課される。対米貿易黒字の大きい約60カ国・地域には上乗せ税率が適用され、日本は24%、中国は34%、欧州連合(EU)は20%など。米政府が先に発動を決めた輸入自動車への25%追加関税は3日から適用が始まるが、相互関税から除外される。

モルガン・スタンレーMUFG証券の山口毅日本チーフエコノミストらは3日付リポートで、事前の想定よりも厳しい内容とし、適用除外の交渉にも時間がかかる可能性を指摘。米国を含む世界経済の減速を背景に、日本の成長がさらに減速するリスクが高まったとし、日銀が利上げ路線をしばらく停止するリスクが出てきたとみる。

9月までの利上げ確率低下

ブルームバーグのデータによると、米相互関税の発表後、金利スワップ市場で5月会合での利上げの予想確率は2日時点の14%から1ケタ台に低下。92%だった9月までの予想確率も70%台となった。ブルームバーグの3月会合前の調査では、次の利上げの予想は7月が48%と最多で、6月が15%、5月と9月が13%だった。

3日の東京株式市場では、日銀の利上げ観測の後退から、三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループの3メガバンクを含む銀行株が大幅に下落。TOPIX銀行業指数は一時前日比8.5%安まで下げた。

大和証券の末広徹チーフエコノミストは3日付リポートで、想定以上の相互関税の内容を受け、日銀が影響を見極める時間は長期化するだろうと指摘。ただ、非関税障壁として日銀の低金利政策(円安誘導)が強く考慮されているとすれば、日銀が利上げをすべきであるという話につながっていく可能性があるとの見方も示した。

今後のポイントは、日銀が経済・物価情勢の展望(展望リポート)で示している2%物価目標の実現シナリオへの影響だ。日銀は経済・物価が想定に沿って推移すれば利上げで緩和度合いを調整していく方針だが、見通しが大きく下振れれば正常化路線が修正を迫られる可能性がある。5月会合で議論する展望リポートでは、新たに示される2027年度を含めて、米関税政策の影響がどう反映されるのかが焦点となる。

(説明などを追加して更新しました)

--取材協力:藤岡徹、氏兼敬子、上野英治郎.

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