(ブルームバーグ):米企業が先月に発表した自社株買いは、金額ベースで新型コロナ禍以来の低水準となった。経済成長鈍化や貿易戦争を巡る懸念から、企業が手元資金の確保に動いていることが示唆される。
米国で3月に発表された自社株買いは39億1000万ドル(約5870億円)と、2020年10月以来の低水準。3月としては19年以来の低さだった。ビリニー・アソシエーツがまとめたデータで明らかになった。
自社株買いは米株式市場を支える重要な柱の一つであるため、投資家にとっては気がかりな材料となる。株式相場は2月に付けた史上最高値から既に大きく下落、トランプ政権が打ち出す関税政策による圧力にさらされている。
「関税がどうなるのか誰にも分からない」とビリニー・アソシエーツのジェフ・ルービン社長は指摘。「経営者はキャッシュフローをどのように計画すればいいだろうか。貿易の見通しが一段と明確になるまでは、配当を減らすよりも、自社株買いを減速させる方がずっと簡単だ」と述べた。

自社株買いの低迷は、企業幹部の信頼感が弱まりつつあることを示唆している。米金融当局はインフレが一段と鈍化するまで利下げを見送る方針を示しており、株式市場の持ち直しには自社株買いの再活性化が必要かもしれない。
企業は数年にわたって自社株買いに消極的だったが、2024年に猛烈なペースで購入を再開し、年間の買い戻し額は過去2番目の高水準を記録した。予想を上回る業績や営業利益率の改善が追い風となった。
貿易戦争が激化する恐れがある中、今年の自社株買いの見通しは不透明だ。11日のJPモルガン・チェースを皮切りに本格化する企業の決算発表でその手掛かりが示される可能性がある。
原題:Corporate America Hoards Cash for Tariffs Over Buying Back Stock(抜粋)
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