トランプ米政権は2日(日本時間3日)、貿易相手国と対等の関税率を求める「相互関税」の詳細を明らかにした。米国への全輸出国に基本税率10%を賦課すると同時に、対米貿易黒字の大きい約60カ国・地域を対象に上乗せ税率をそれぞれ適用するとし、日本に対しては24%に設定した。

日本に関しては、為替政策や貿易障壁を加味すれば米国に対して実質46%の関税をかけているとし、それに見合う相互関税率を24%とした。トランプ氏は「日本はわれわれに46%を課し、自動車のような特定の品目にはそれよりもさらに高い水準を課している。46%だ。われわれは24%を課す」と述べた。

また、「日本は非常に手ごわく、素晴らしい人々だ。改めて言うが、私は日本国民を非難しているわけではない。彼らがそうするのは非常に賢いやり方だ」との見解を示した。その上で、米国の輸出品に対する貿易障壁が撤廃されれば関税引き下げを検討する意向を示した。

ホワイトハウスはファクトシートで、中国、ドイツ、日本、韓国などは輸出品の競争力を「人為的に」高めるために、逆累進的な税制、環境悪化に対する罰則の緩さや形骸化、労働者の生産性に見合わない賃金抑制などの政策を実施してきたと非難した。基本税率は米東部時間5日午前0時1分(日本時間同午後1時1分)、上乗せ税率は9日午前0時1分(同午後1時1分)に適用される。

日本時間3日午後には自動車への追加関税が発動された。トランプ政権による一連の関税措置で日本経済や産業活動への影響は避けられない見通しだ。

日本除外を要請

トランプ氏はホワイトハウスのローズガーデンで行われたイベントで、世界中の貿易相手国に関税を課すと述べた

石破茂首相は同日午後、米国の対応について「極めて残念であり不本意だ」とした上で、見直しを強く求めると官邸で記者団に語った。世界貿易機関(WTO)や日米貿易協定との整合性に「深刻な懸念を有している」との見解を表明した。

米国との交渉は閣僚らが積み上げるが、場合によっては自らトランプ大統領に対し、最も適当な時期に適切な方法で直接働きかける考えも示した。

また、国内産業への影響を十分に精査し、万全の支援をすると強調。米国政府がコメを巡る日本の対応について言及したことも併せて極めて遺憾とした。

自動車関税の発動を受け、3日から政府系金融機関や商工団体など全国約1000カ所に特別相談窓口を立ち上げたことを明らかにした。中小・小規模事業者など向けの資金繰り支援を行う方針も改めて示した。今後発動される「相互関税」で影響を受ける事業者にも同様の支援を実施する。

石破首相は同日、関係閣僚を集め、関税措置の日本への影響を十分に分析するほか、資金繰りを含め必要な対策に取り組むことなどを指示した。その後、武藤容治経済産業相は省内で開いた「米国関税対策本部」の冒頭、自動車について「わが国産業の大黒柱」だと指摘し、関税措置の影響を「特に注視する必要がある」と語った。

野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは3日付リポートで、相互関税は「事前に予想されていた中で最悪シナリオに近いもの」とし、日本の名目および実質国内総生産(GDP)押し下げ効果は1年など比較的短期間で0.59%と試算。自動車関税の影響を加えると0.71-0.76%とみる。日本には相当の打撃で、「景気後退の引き金になる可能性も考慮しなければならないのではないか」と記した。

与野党からは政府に対し、国内企業の支援などに迅速に取り組むよう求める声が相次いだ。公明党の斉藤鉄夫代表は党中央幹事会で日本経済への影響を「最小限に抑えるため、政府には的確なかじ取りを求めたい」と語った。

日本維新の会の前原誠司共同代表は会見で、特に影響が懸念される自動車産業に言及した上で、「緊急融資などさまざまなサポート体制が必要になる。政府には万全の対応策を求めたい」と語った。日本の対応として報復は「慎むべき」であり、交渉の余地があるとの見解を示した。

一方、立憲民主党の重徳和彦政調会長は党会合で、米国に対して「厳しく交渉に当たるべきだ」と指摘した。

トヨタを名指し

トランプ氏は主要な自動車産業を有する日本と韓国を批判。「日本にある自動車は94%が日本製だ。トヨタ自動車は100万台の外国産自動車を米国で販売している一方、ゼネラル・モーターズ(GM)やフォードはほとんど販売していない。米国の企業は他国で排除されている」と強調した。

トヨタ自動車はこれまでも米国企業の一員として、顧客ニーズに応えられるよう取り組んできたと強調。関税の影響については引き続き状況を注視するとして、それ以上のコメントを控えた。同社はかねて追加関税の発動後も米国で販売する車両について当面は値上げなどの対応は行わない方針を明らかにしている。

米国の自動車メーカーは米基準の未受容、重複する試験や認証手続き、透明性を巡る問題など非関税障壁に直面しており、米自動車産業は対日輸出で年間135億ドル(約2兆円)相当の潜在的な機会を失っていると米政権は主張した。

ホワイトハウスによると、米国に輸入される自動車および自動車部品は今回発表された「相互関税」の対象からは除外される。鉄鋼やアルミ、銅、医薬品、半導体、木材製品なども適用対象外となる。

貿易統計では、2024年の日本から米国への自動車輸出は金額にして6兆円超で、自動車部品の約1兆2300億円を合わせれば、対米輸出の3分の1を占める規模となる。米政府は、エンジンなどの自動車部品にも5月3日までに25%の追加関税を課すとしており、日本の自動車業界は打撃を受ける可能性がある。

(武藤経済産業相の発言を追加し、更新します)

--取材協力:Gabrielle Coppola、稲島剛史、古川有希、広川高史、関根裕之.

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