(ブルームバーグ):ラピダスは1日、北海道千歳市内の半導体工場で試作ラインの稼働準備が整ったと発表した。ゼロから会社を設立し、国の全面支援を受けて急ピッチで準備を進めるが、最先端半導体の量産に向けてはこれからが正念場だとの指摘もある。
小池淳義社長の説明によると、工場に搬入した装置の立ち上げを今後進め、月内に半導体の原料であるウエハーを投入する計画だ。最初の試作品が出てくるのは7月中旬から下旬を予定しているという。
小池氏は今後、「歩留まりをきちんと確認していく、あるいは信頼性を確保していく」ことが今後の大きな課題になると述べた。販路開拓で30-40社に当たっているが、同社の規模を鑑みると顧客数は10社未満になるだろうとの考えを示した。
ラピダスは2027年に最先端の2ナノメートル(ナノは10億分の1)半導体の量産を目指し、22年に設立した。4月の試作ライン稼働はかねて示していたスケジュールにおおむね沿っており、量産に向けて一定の道筋を付けた格好だ。
設立から3年弱のラピダスが工場建設や設備稼働までこぎ着けた背景には、国の多大なサポートがある。政府は出資を含めて累計1兆8000億円超の支援を表明。経済安全保障の観点から国内での半導体生産体制の強化が必要だとしている。
無理筋に近い
ただ2ナノの量産に向けた技術面のハードルは高い。岩井コスモ証券の斎藤和嘉シニアアナリストは、ラピダスと協業する米IBMの技術は研究開発にとどまっていることや、極端紫外線(EUV)露光装置の扱いには時間がかかる点を挙げ、「いきなり最先端半導体を作るのは無理筋に近い」と指摘する。
量産準備が整ったとしても、歩留まりの問題がある。斎藤氏によると、韓国のサムスン電子や米インテルは2ナノよりも前の世代で不良品率の低減に苦戦し続けているという。台湾積体電路製造(TSMC)でさえ、2ナノ製品の量産に向けて一歩ずつ改善を進めている状況だ。
微細化半導体は「構造がさらに複雑になり、膜の厚みやガスの濃度の制御など全てが難しい」と斎藤氏は指摘する。ラピダスの最初の試作品では「歩留まりが10%いけばいい方ではないか」とみる。
量産には5兆円かかるとされる資金の多くが、国に依存している状況にも危うさが漂う。ラピダスへの民間出資は現時点で73億円にとどまる。追加出資を明らかにしたソフトバンク社長の宮川潤一社長でさえ、ラピダスについて「課題は山積み」だと指摘していた。
国会でラピダス関連の質問を続ける日本維新の会の空本誠喜衆院議員は、最先端半導体を研究開発するのはいいが、歩留まりが改善しなければ、比較的簡単で汎用(はんよう)品として需要も見込める5ナノや7ナノの工場に方向転換することを提言する。
岩井コスモの斎藤氏は、「米大手IT企業からそれなりの規模で受注が取れないと非常に厳しい」とも指摘しており、仮にラピダスの量産や大型受注がうまくいかなかった場合には、「TSMCとの協業が現実的になるかもしれない」と述べた。
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