英ヴァージンアトランティック航空は、米国から英国への旅行需要が弱まりつつあると警告した。トランプ米大統領の経済政策による影響への懸念から、米消費者の間で不透明感が強まっている。

米国発便の航空券販売がここ数週間に減少し始めたと、オリバー・バイヤーズ最高財務責任者(CFO)は31日の電話会見で指摘した。年初時点では2024年の水準を上回っていたという。一方、欧州から米国への需要は依然堅調で、英国を拠点とする大西洋横断便で知られる同社にとって明るい材料となっている。

「米国需要が減速しつつある兆しが過去数週間に見られ始めた」とバイヤーズ氏は発言。春の旅行シーズンに「一定の弱さが見られている」と続けた。

米国の関税や反米感情の高まりで収益性の高い北大西洋路線に悪化の兆しがないか注視している投資家は、こうした発言を受けて警戒感を強めている。ヴァージンアトランティックの競合である英ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)の親会社インターナショナル・エアラインズ・グループ(IAG)の株価は一時7%安。他の欧米主要航空各社も値下がり。

米国でも消費者が支出を見直す中、国内線での旅行需要が抑制されている兆しがあると指摘する航空会社が増えている。デルタ航空は年初に利益見通しを半減させたほか、アメリカン航空グループは1-3月(第1四半期)の損失が従来予想のほぼ2倍になるとの見通しを示した。

ヴァージンアトランティック機(ロンドンのヒースロー空港)

「これが大西洋横断路線にも波及するのかどうかがリスクだ」とブルームバーグ・インテリジュンスのアナリスト、コンロイ・ゲイナー氏は話した。

31日の株式市場で、デルタ航空は一時7%安。ユナイテッド・エアラインズ・ホールディングスとアメリカン航空もそれぞれ下落。欧州でもドイツのルフトハンザ航空やエールフランスKLMが値下がり。

これに先立ち、ヴァージンアトランティックが発表した通期決算は2016年以来の黒字となった。トランプ米政権による移民規制強化で欧州から米国への旅行が手控えられるのではないかとの懸念は高まっているものの、大西洋横断路線は最近までレジャーとビジネスの両方で健全な需要が見られていた。

欧州の需要は、特にビジネス目的の旅行で堅調が続いているとバイヤーズ氏は指摘した。ラスベガスやフロリダなどバケーション先への路線も展開する同社では、座席供給を4%増やしており、今年の米国売上高は増加すると引き続き見込んでいる。

原題:Virgin Atlantic Warns of Slowing US Travel Demand to the UK (1)(抜粋)

--取材協力:Nick Bartlett.

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