(ブルームバーグ):ニューヨークやロンドン、香港など各国・地域の投資家は米関税発動を前にリスクを削減するとともに、チャンスが訪れた時に素早く動けるよう、現金保有を増やしている。
世界中の運用者はポートフォリオをニュートラル(中立)にしたり、一部の取引から撤退したり、リスクを軽減したりしている。
トレーダーが大きなポジションを取るのを避けているため、米国債市場の取引量は減少している。
一部のトレーダーは、トランプ米大統領がいわゆる相互関税を賦課する前に、オプションでヘッジすることを検討している。
同時に、多くの投資家が迅速に再参入する準備を整えている。数カ月にわたって市場を混乱させてきた関税に関する一進一退の駆け引きに終止符が打たれる発表があれば飛び込むつもりだ。
パインブリッジ・インベストメンツの新興国市場グローバル債券共同責任者、アンダース・フェアグマン氏(ロンドン在勤)は「トランプ政権の関税に関する最終的な方針がより明確になれば、安心感から予想外の相場上昇が起こる可能性がある」と述べた。「最悪のケースは、また新たな期限が設定されることだ」と付け加えた。

多くの投資家と同様に、同氏はより安全な資産を求め、新興国のジャンク債から離れ、米国の成長の影響を受けにくく質の高い銘柄を買い増している。
アバディーン・インベストメンツのファンドマネジャー、シンヤオ・ウン氏(シンガポール在勤)は、準備の中心は「関税の決定によってそれほど影響を受けない企業に投資することだ。そして、大きく弱含む資産があれば、ボラティリティーを利用して掘り出し物を探す」と話した。
年初にはドルのロングポジション(買い持ち)などが最善のヘッジ策と思われたが、米国に関するセンチメントが弱まったことでそれは覆されたと、RBCブルーベイ・アセット・マネジメントのシニアポートフォリオマネジャー、アンソニー・ケトル氏は言う。
ポートフォリオを保護するために通貨ではなく株式を利用することにした同氏は、米国株のプット(売る権利)オプションを活用することで、原資産の価格変動による損失を軽減するプロテクション(保護)をある程度確保できると述べた。
4月2日の関税発動期限を前に、資金運用者はさまざまな対応を取っている。
JPモルガン・アセット・マネジメントのポートフォリオマネジャー、プリヤ・ミスラ氏は「5年物のデュレーションと、5年物と30年物のカーブスティープナー(利回り曲線のスロープが急になることで利益を得る投資戦略)を保有することで4月2日に備えている。また、リスクプレミアム拡大を考慮して信用ポートフォリオのリスクを軽減している」と語った。
コロンビア・スレッドニードル・インベストメントの金利ストラテジスト、エド・アルフセイニ氏は、米国債については「人々は様子見に徹しており、積極的にポジションを構築しようとはしていない。特にここ数週間は取引量が減少し、流動性がやや低下している」と指摘した。
「クレジットでは、スプレッドがさらに拡大するのを待っているが、まだそうなっていない」と語った。
デルテック・アセット・マネジメントのポートフォリオマネジャーで新興国株を専門とするグレッグ・レスコ氏は「長期保有の株式投資家にとっての合言葉は、『機敏に動いて、嵐をうまく乗り切る優良企業を所有する』だ。私はどんな変動にも対応できるよう、かなりの現金を保有している」と述べた。
スペクトラFXソリューションズのブレント・ドネリー社長は「恐らく4月2日以降、市場が不確実性が去ったことに安堵(あんど)の息をつくことでリスク資産が大きく反発するだろう」とみている。
GAMAアセット・マネジメントのグローバルマクロ・ポートフォリオマネジャー、ラジーブ・デメロ氏は「多様な国、セクター、通貨で、リスクテークを緩やかに増やしている」と述べた。「米国と日本の株式、ドイツとスイスの債券、新興国通貨建て債券へのエクスポージャーを増やすことを検討している」とも語った。
オールスプリング・グローバル・インベストメンツのシニアポートフォリオマネジャー、ローレン・バン・ビリヨン氏は「関税発表を前に、リスクについて非常に慎重であることは確かだ」と述べた。為替のリスクを削減したが、日本円には「ある程度のエクスポージャー」を維持しているという。
原題:Macro Traders From New York to Hong Kong Prep for Tariff Day (1)(抜粋)
--取材協力:Iris Ouyang、Abhishek Vishnoi、Sangmi Cha、Zijia Song、Alice Atkins、Catherine Bosley、Naomi Tajitsu.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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