31日の日本市場では株式が急落。日経平均株価は昨年12月高値からの下落率が10%を超え、テクニカル面では「調整局面入り」した。米経済がスタグフレーション(景気低迷の中での物価高)に陥るとの懸念から投資家のリスクオフ姿勢が鮮明になった。

東京株式相場はほぼ全面安、日経平均株価の下げは一時1578円(4.3%)に達した。トランプ大統領の関税政策を背景として米消費停滞とインフレ警戒が強まっており、米国市場と同様にリスク資産の株式を売る動きが強まった。同時に安全資産の債券は買われて長期金利が低下し、1ドル=148円台までリスク回避の円買いが強まった。

4月2日に発動予定の米関税は現時点で内容が不透明な上、発表後の国別の交渉も読みにくい状況だ。金融市場のリスクオフを反映した安全資産需要の高まりを象徴するように金が最高値を更新。金相場は今年に入り約18%上昇し、少なくとも15回史上最高値を更新している。

野村アセットマネジメントの石黒英之チーフ・ストラテジストは、米経済指標を受けてスタグフレーション懸念が出ているとして、杞憂(きゆう)に終わるかどうか見極める必要があるとリポートで指摘。米金融当局の政策判断や物価指標や消費動向が注目だとした。足元の米国株から株式市場参加者は、年内3回程度の利下げをほぼ織り込んでいるFF金利先物市場参加者に比べて利下げに懐疑的なようだとの見方を示した。

株式

東京株式相場はほぼ全面安となり、日経平均株価は終値で昨年8月以来の安値を付けた。トランプ大統領の関税政策を背景とした米国の消費停滞とインフレ警戒の高まり、為替の円高を受けて投資家心理が悪化した。

大和証券の柴田光浩シニアストラテジストは、関税政策が景気を抑える中で米物価は強く、嫌気されやすい組み合わせと指摘。一方、4月2日の相互関税の後には関税政策への見方が悪化する可能性は低いとして「相場は落ち着いてくるだろう」と話した。

アジア時間31日の米国株先物が一段安となる中、先に売られていたテクノロジー関連や景気敏感株だけでなく、高値圏で持ちこたえていた金融株も崩れた。東海東京インテリジェンス・ラボの平川昇二チーフグローバルストラテジストは「世界的な景気減速や金利低下を織り込む形で銀行株も下がりやすい」とみていた。

ルネサスエレクトロニクス株は日経平均の中で最も下落し、一時11%超安と続落、日中下落率は2024年8月以来の大きさとなった。ルネサスがSiC(炭化ケイ素)ウエハー供給契約を締結している米ウルフスピード株が資金繰り懸念から28日に52%安と急落した。

債券

債券相場は大幅上昇。米国で消費者マインドの悪化を受けて長期金利が大幅低下したことや国内株式相場の急落を受けて買いが優勢だった。この日に実施された2年国債入札は無難な結果となり、債券相場の支えとなった。

SMBC日興証券の田未来シニア金利ストラテジストは、2年債入札は金利水準の高さやリスクオフムード、担保需要もあってある程度応札が集まり無難にこなしたと述べた。

入札結果によると最低落札価格は100円6銭と、市場予想100円5銭5厘を上回り、小さいと好調を示すテール(落札価格の最低と平均の差)は1銭1厘と、前回の1銭3厘から縮小した。投資家需要の強弱を反映する応札倍率は3.41倍と、前回の3.16倍から上昇した。

日本銀行は31日午後5時に4-6月の国債買い入れオペ予定を公表する。24年7月の金融政策決定会合で決めた買い入れ減額計画の実施後、初めて超長期ゾーンが減額される可能性がある。

SMBC日興証の田氏は、10年超25年以下のオペ減額を予想する見方は市場で半々だとして「減額されても据え置きとなってもどちらもサプライズになりそうだ」と述べた。

新発国債利回り(午後3時時点)

為替

東京外国為替市場の円相場は1ドル=148円台後半まで上昇し、主要通貨に対して全面高になった。米国の景気不安の高まりを背景に日本株が大幅に下落し、リスク回避の流れが強まった。

野村証券の後藤祐二朗チーフ為替ストラテジストは、4月2日に予定される米関税に対する不透明感がある上、米経済指標は消費関連が弱め、インフレは強めと、スタグフレーションへの警戒を強める内容だと指摘。「関税の影響が本格的には出てない段階から市場は不確実性の高まりで動きだしている」と述べた。

ソニーフィナンシャルグループの森本淳太郎シニアアナリストは、4月2日に発動予定の米関税は現時点で内容が不透明な上、発表後も「各国の交渉が進んで不安が払しょくされるには時間がかかる」との見方を示し、不安定な市場がしばらく続くと懸念する。

米商品先物取引委員会(CFTC)によると、IMM通貨先物非商業部門の円買い越しポジションは25日時点で12万5376枚と、引き続き高水準。

この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。

--取材協力:長谷川敏郎、山中英典、我妻綾、横山桃花.

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