2月の米個人消費支出(PCE)統計では、支出の伸びが前月に続き、市場予想に届かなかった。一方、連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ指標として重視するコア価格指数は予想を上回る伸びを示した。支出抑制とインフレ加速は、米経済にとって二重の打撃となる。

 

ルネサンス・マクロ・リサーチの米経済担当責任者ニール・ダッタ氏は「消費者は値上げに抵抗感を持っている」とリポートで指摘。「最終的にインフレは家計圧迫につながる。状況は悪化しつつある」と記した。

PCE発表後の金融市場では、S&P500種株価指数が下落。米国債利回りは低下した。金利スワップ市場では引き続き、年内おおよそ2回、0.25ポイントずつの利下げが織り込まれている。次回の利下げは7月と予想されている。

根強いインフレ

今回の統計はインフレの根強さを示した。トランプ政権の関税措置は物価上昇圧力を一段と高め得る。同政権の攻撃的な貿易政策は企業と消費者のセンチメントを損なっている。与信環境から見た家計も逼迫(ひっぱく)の兆候を示しており、米経済はスタグフレーション(景気悪化と物価上昇の同時進行)ないしリセッション(景気後退)に陥る可能性があるとの懸念も強まっている。

関税が物価に及ぼす影響は大部分、財を通じてもたらされる。コア財価格は前月に続いて0.4%上昇となった。連続した2カ月分の伸びとしては2022年以来の大きさ。住宅とエネルギーを除くコアサービス価格も約0.4%上昇した。

そうした中でも財への支出は、自動車など耐久財への需要拡大を受けて増加した。一部の消費者が関税措置発動の前に購入を急いだことを示している可能性がある。一方、サービス支出は約3年ぶりに減少した。物価が上昇する中、外食などが落ち込んだ。

PCE統計の後に発表された3月の米ミシガン大学消費者マインド指数(確報値)は約2年ぶりの低水準となり、長期のインフレ期待は32年ぶりの水準に上昇した。

ブルームバーグ・エコノミクスのスチュアート・ポール、イライザ・ウィンガー、エステル・オウ氏は「消費者センチメントの悪化は今後の消費支出と経済成長に重くのしかかる。FRBは今年下期、最新の金利予測分布図(ドット・プロット)で示したよりも多く、また迅速に利下げが必要になる公算が大きい」と指摘した。

貯蓄率は上昇して昨年6月以来の高水準。消費者が家計への慎重姿勢を強めている状況が示唆される。名目の賃金・給与は0.4%上昇した。

統計の詳細は表をご覧ください。

原題:US Consumer Spending Barely Rises, Key Inflation Gauge Picks Up(抜粋)

(統計の詳細やエコノミストの見方を追加して更新します)

--取材協力:Chris Middleton、Matthew Boesler、Cecile Daurat.

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