2月の米個人消費支出(PCE)統計では、連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ指標として重視するコア価格指数が、市場予想を上回る伸びを示した。

同統計に関する市場関係者の見方は以下の通り。

◎モルガン・スタンレー・ウェルス・マネジメントのエレン・ゼントナー氏:

様子見に回っているFRBは、まだ待つ余裕があるようだ。この日の予想を上回ったインフレ指標は、特に過熱しているというわけではないが、関税を巡る不確実性を考慮すると、利下げ見通しを早めるものではないだろう

◎ラザード・アセット・マネジメントのデービッド・アルカリー氏:

新しい関税など政策変更の影響がこの先数カ月で表面化するだろうが、きょうのデータは多くの市場関係者が注目する典型的なパターンを示した。つまり予想より弱い支出と、予想より強いインフレだ。

◎ルネサンス・マクロ・リサーチのニール・ダッタ氏:

2月のPCE統計は消費者が価格上昇に抵抗していることを示している。コアインフレは堅調な伸びとなり、実質支出は低調が続いた

先行き、心配なのは個人貯蓄率の上昇だ。株式相場は不安定な動きが続いている。住宅在庫の増加は住宅価格を圧迫するだろう。消費者は雇用見通しへの懸念を強めている。2024年の個人消費拡大の大半は、貯蓄率の低下によってもたらされた。この傾向が今後も続くと見込む理由はない

◎トレードステーションのデービッド・ラッセル氏:

コアPCEは予想より高かった。所得が高く、関税が予定されていることから、ここから下げる可能性は低いかもしれない。今目にしているのはオールドエコノミー最後の名残であって、インフレ期待はこれから恒久的に上方修正されるのかもしれない。これはゴルディロックス(適温経済)とは正反対の状況と考えられ、所得とインフレが高すぎて連邦公開市場委員会(FOMC)は金利を大きく引き下げられない。その一方で経済成長と企業利益率の見通しは暗くなりつつある。

◎キー・プライベート・バンクのポール・トフト氏:

けさ見られた上振れのサプライズは、米金融当局のインフレとの闘いが3%近辺で足踏みしており、目標の2%にはまだ距離があることを改めて示した。今週は自動車関税が発表されたほか、来週も新たな関税が予定されている。これら関税はインフレ圧力となる可能性が高く、FOMCは向こう数回の会合において利下げペースが一段と減速しそうだ。きょうのPCE統計は、今後2回の会合のうち1回で利下げに動きたいと強く考えているFOMCメンバーにとっては目の上のたんこぶだ。インフレ率は3%付近に根強くとどまっているように見受けられる。来週発表の関税はその状況を悪化させる恐れがある

◎eToro(イートロ)のブレット・ケンウェル氏:

衝撃的なものではないが、現在の経済的な不確実性と市場のボラティリティーを考えると、投資家は今回の統計に安心感を求め、火に油を注ぐような内容であってほしくないと考えていた

過去を振り返ると、コアPCE価格指数の前年比の伸び率が2-4%という穏やかなインフレ環境下では、S&P500種株価指数はかなり良好なパフォーマンスとなる傾向がある。しかし、投資家は今、過去の統計にはあまり関心を示していないようだ。むしろ、主な関心は米金融当局の対応力にある。具体的には、インフレ率がまだ低下していない状況で、景気減速時に金利引き下げができるのかということだ

最も懸念すべきなのは、経済が著しく減速している中、インフレ率が高止まりすることだ。このリスクは現時点では基本シナリオではないかもしれないが、今後その勢いが増せば、投資家心理にさらに重くのしかかる可能性がある。しかし、経済がさらに悪化しない限り、スタグフレーションのシナリオに飛びつくには時期尚早だ

原題:Stocks Fall, Bonds Rise on Mixed Economic Signals: Markets Wrap(抜粋)

--取材協力:森 茂生、大塚美佳、千葉 茂.

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