フジ・メディア・ホールディングス株が28日の取引で、一時前日比7.4%高の2596円を付けた。同社は27日に取締役相談役を務める日枝久氏を含む経営陣の退任を発表。市場では新経営体制での資本効率の改善などにも期待が高まっているようだ。

フジHDは27日、40年以上にわたり役員級のポストに付き影響力を及ぼしていたとされる日枝氏をはじめ、取締役の大半を入れ替える人事を発表した。独立社外取締役を過半数にするほか、取締役の平均年齢を引き下げる。

経営陣刷新に伴う事業戦略の変化や資本政策の改善に市場は期待しているようだ。フィリップ証券の笹木和弘リサーチ部長は、会社が自主的に変わろうとする姿勢が伝わったほか、「事業再編による効率化への期待など」から買われているのではないかと話した。野村証券の原畑亮平アナリストは、人権・コンプライアンス体制の強化策や資本効率の改善策に今後注目すると述べた。

2月にフジHD株を取得し、大株主となっていた資産運用会社レオス・キャピタルワークスの藤野英人社長は、経営体制が変われば日本の中で1番開かれ、デジタル化にも前向きな会社に変貌する余地があるとかねて期待感を示していた。

とはいえフジHDと子会社のフジテレビジョンを巡る問題が解決した訳ではない。元タレントの中居正広氏と女性間の性的トラブルへの対応などを調べる第三者委員会の報告書は31日にも公表される見通しだ。役員の処分や再発防止策が焦点となる。

7割が回答保留

またフジHDへの目線は依然として厳しい。昨日夕方に記者団の取材に応じたフジテレビ社長の清水賢治氏によると、4月以降のスポンサーとの契約について、現時点で約7割が回答を保留していると明かした。

ブルームバーグの問い合わせに対して、スズキの広報担当者は経営刷新の発表だけで広告出稿を再開する予定はないと答えた。スバルも決まっていることはないとした上で、第三者委員会の調査結果など引き続き状況を注視して総合的に判断するとした。

三菱電機は4月分はすでにCM停止を続けることが決まっており、5月以降の分は今後判断する。トヨタ自動車は再開について明言せず、広告出稿は顧客やステークホルダーから共感を得られる形で行いたいとした。サントリーホールディングスはコメントを控えた。

企業統治(コーポレートガバナンス)の問題は解決しておらず、広告収益の回復が現時点で見込めない中、社債スプレッド(上乗せ金利)は高止まりしたままとなっている。

ブルームバーグのデータによると、2023年に発行され28年12月に満期を迎える社債のスプレッドは27日時点で約119ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)だった。前日からほぼ横ばいで、トラブルが発覚する以前の水準を大幅に上回る。

土屋アセットマネジメントの土屋剛俊社長は、フジHDは「第三者委員会の発表がまだ出ていないのに人事を発表した。ガバナンス問題はまだ残っていて、信用リスクの判断を変えるような状況でない」と指摘。一方、株式投資家は日枝氏の退任で広告スポンサーが戻ってくるだろうというアップサイドを狙って先行して判断しているとし、社債と株式投資家の間には「メンタリティーの違いがある」と指摘した。

--取材協力:長谷部結衣、稲島剛史、吉田昂.

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